研究課題
本研究ではヒトの生活に関わる愛玩動物や環境水、医療関連感染や医療環境に由来する薬剤耐性菌の耐性因子やクローンの関連性を解析する。これにより、ヒト臨床上重要な薬剤耐性菌の動態や疫学及び伝播・拡散における環境や愛玩動物の役割の解明を目的とする。環境水である下水流入水から初めてmcr-1保有コリスチン耐性Escherichia coli (家禽病原性大腸菌の病原関連因子保有)やmcr非保有コリスチン耐性Klebsiella pneumoniae、さらには国内で未検出のキメラ型を含むESBL遺伝子保有E. coliを確認した。下水流入水は概ねヒト集団の腸管細菌叢を反映すると認識されているが、加えてヒト臨床上重要な耐性遺伝子や流行クローンのリザーバーや、耐性遺伝子の組換えの場となり得る可能性が示唆される。セフタジジム耐性Serratia marcescensによる医療関連感染では、Tn1-blaTEM-61の拡散に本transposonを担う狭宿主域プラスミドの2種の遺伝系統株 (Genotypes 1、2)間での水平伝播、プラスミド保有Genotypes 1、2自体の伝播事象に加え、Tn1-blaTEM-61の高頻度伝達性の広宿主域プラスミドへの細胞内転移事象が関与した複雑な伝播動態が明らかとなった。愛玩動物由来MRSAの解析から、CA-MRSAの遺伝系統がヒトと愛玩動物の両方に適応し、愛玩動物がこれらの株の感染源や媒体となる可能性が示唆される。HA-MRSAではヒトにのみ適応する遺伝系統に加え、ヒトと愛玩動物の両方に感染し得る遺伝系統が存在し、二次的感染源としての愛玩動物の役割を考慮する必要があると考える。これらの研究成果は, ヒト-動物-環境を介した薬剤耐性菌や耐性因子のヒトへの伝播・拡散防止のための医療関連感染対策並びに公衆衛生対策に資することが可能となる。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Microbial Drug Resistance
巻: - ページ: -
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