本年度は、昨年度合成したメタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤Z1の化学構造改変を行い、新たにZ2およびZ3阻害剤を創出し、これらの評価を行った。プロトタイプとなるZ1阻害剤はIMP型、NDM型、VIM2型など各種メタロ-β-ラクタマーゼを強く阻害(Ki値:0.01uM~0.1uM)し、メタロ-β-ラクタマーゼ産生菌にも阻害効果を示したが、低溶解性という問題点が残されていた。そこで、Z1阻害剤を化学構造改変し、低溶解性の問題を克服することを試みた。 新たに創出したZ2阻害剤は、フリー体では低溶解性のままであったが、ナトリウム塩もしくはカリウム塩とすることで、生理食塩水のへの溶解性が大幅に向上した。また、Z3阻害剤はフリー体の状態で高い溶解性を示した。Z2阻害剤は、酵素および生菌に対して、Z1阻害剤と同程度の阻害効果を示したものの、Z3阻害剤の効果は、Z1阻害剤よりも劣る結果となった。 また、Z2阻害剤のin vivoにおける阻害効果を検証するすためにマウス感染モデルを用いた動物実験を行った。腹腔感染-腹腔投与モデル、腹腔感染-静脈投与モデル、いずれにおいてもZ2阻害剤の効果によりマウスの救命率が有意に改善することが確認された。さらに、肺感染-腹腔投与モデルにおいては、Z2阻害剤の効果により肺内の菌数が有意に減少することが確認された。Z2阻害剤は代謝安定性試験、毒性試験など各種の非臨床試験においても良好な成績を示した。
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