研究課題/領域番号 |
18K08436
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中田 浩智 熊本大学, 病院, 講師 (40628492)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HIV / ケモカイン受容体 / CCR5 / CXCR4 / 抗HIV薬 |
研究実績の概要 |
本研究はHIVのコレセプターであるケモカイン受容体(CXCR4もしくはCCR5)のHIV感染時の動態を明らかにし、新たな治療手段として応用することを目的としている。以前の研究で複数のケモカイン受容体がHIV感染に必要である可能性が示唆されたため、今回はその複数のケモカイン受容体が多量体・単量体のいずれの形態を取る時にHIV感染に有利であるかの検討を行っている。 まずHIVのコレセプターであるCXCR4の多量体化に影響を与える可能性がある複数のアミノ酸残基をアラニンに置換し、この変異導入が細胞のHIVへの被感染性にどのような影響を与えるかを調べた。変異導入は細胞外ループ基部付近と膜貫通ドメインに存在するアミノ酸で、2量体形成時に接触面を形成する可能性がある部位を選択した。被感染性の評価は①fusion assayと②p24測定の2つの実験系で行うとともに、CXCR4の細胞表面の発現はフローサイトメトリーで確認した。その結果変異の導入はCXCR4の細胞表面の発現量には大きな影響を与えなかったが、変異の中には被感染性を増強あるいは減少させるものが見られた。これらの変異を複数個組み合わせたものを同様に細胞表面に発現させ、被感染性がどのように変化するかを評価した。その結果からは単量体が感染に有利である可能性が示唆されており、現在のCXCR4に蛍光色素を結合させた発現プラスミドを作成し、FRETの系などで、変異CXCR4同士の相互作用やHIVが加わった時の変化を評価する系を作成し裏付けを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標であった単量体・多量体を評価するため蛍光発現するCXCR4プラスミドを用いたアッセイ系の準備を進めており、順調に進んでいた。しかしながら、コロナウイルス感染の流行に伴い、院内感染対策やコロナウイルス診療に時間を割く必要が生じ、研究の進展が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
複数の変異を有するCXCR4の被感染性に与える影響を引き続き評価する。またそれらの変異CXCR4が多量体・単量体のいずれの形態を取るかを蛍光物質を付加したCXCR4を用いた評価系で評価する。必要に応じてウエスタンブロットでもケモカイン受容体の多量体・単量体の評価を行う方針である。CXCR4変異の部位と被感染性の解析を行い、一定の傾向が見出された場合それらの部位を標的とした薬剤の設計や多量体・単量体いずれかに誘導する薬剤の開発などHIV治療への応用を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
CXCR4変異作成のための実験を継続するために試薬等消耗品の購入が必要であり、研究の円滑な推進のために研究打合せ、情報収集のための旅費、研究補助の人件費が必要である。
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