アポリポタンパク質E (ApoE)は、脂質代謝、特にコレステロールの運搬に関与し、ApoE2、ApoE3、そしてApoE4の3つのアイソフォームが存在する。ApoEは肝臓やマクロファージ、脳で発現し、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染増殖に必要な宿主因子であることが知られている。我々も、昨年度までの研究において、ApoEがマクロファージにおけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染複製を抑制する宿主因子であることを見出している。本年度は、ApoEのB型肝炎ウイルス(HBV)の複製における役割について、研究を進めた。 先ず、HBV-D複製ヒト肝細胞株HepG2.2.15.7細胞をApoE siRNAを用いて、ApoEをノックダウンさせ、細胞内のHBVコア結合HBV DNAレベルをreal-time PCRで定量解析した結果、ApoEノックダウン細胞では、コントロール細胞に比べ、細胞内のHBVコア結合HBV DNAレベルが顕著に亢進した。一方、3つの異なったApoEアイソフォームをHBV分子クローンと共に強制発現させると、全てのApoEアイソフォームが細胞内のHBVコア結合HBV DNAレベルを著しく抑制した。さらにApoEの欠損変異体を用いた解析では、ApoEのC末ドメインにHBV複製を抑制する活性を同定することが出来た。興味深いことにApoE3はHBxタンパク質の発現を抑制することも観察されたが、HBVプロモーターのルシフェラーゼアッセイにより、ApoE3はHBVプロモーター活性には影響を及ぼさないことが判明した。以上の結果より、ApoEはHBxを分解することにより、HBV複製を抑制することが示唆された。
|