本研究では、放射線障害により誘導されたanti-inflammatory cellsや急性期炎症性蛋白が腸管粘膜にどのような影響を与えるかについて、電子顕微鏡等を用 いた直接的な画像評価を行うことを目的としている。マウスの小腸は他の消化管粘膜に比較してより放射線性障害を受け易いことが報告されている。本研究では マウスの回腸への放射線照射およびbacterial translocationについて検討するものであるが、これまで申請者は1~14Gyまでの放射線照射量と回腸粘膜のダメー ジとの相関性について、組織学的な評価を行ってきた。最終年度は、腸管粘膜へのbacterial translocationの進展について、血中及び臓器内菌数の評価を画像的評 価を行った。急性期蛋白であるオロソムコイドはIL-10陽性の抗炎症性単球の産生を誘導するが、これまでの検討で、放射線照射マウスにオロソムコイドの腹腔内投与を行ったところ、回腸の粘膜障害が改善される可能性が示唆され、オロソムコイドの抗炎症作用によってもたらされている可能性が示唆された。今後も引き続き、より多くのマウスを用いて検討を行い、オロソムコイドの腸管粘膜障害への修復機序について明らかにする方針である。これまで、オロソムコイド投与群、非投与群で放射線障害を行い、腸管リンパ節内の自然免疫リンパ球や腹腔内に滲出するマクロファージなどについて、両群間で特徴を比較検討を行っている。同様に、プロバイオティクス投与によっても放射線照射による腸管障害が改善する可能性が示唆された。
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