研究課題/領域番号 |
18K08443
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
井坂 雅徳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40336673)
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研究分担者 |
長谷川 忠男 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (10314014)
前山 順一 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 主任研究官 (40199641)
立野 一郎 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (50311642)
青山 峰芳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (70363918)
矢木 宏和 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (70565423)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | A群連鎖球菌 / ヒスチジンキナーゼ / バイオフィルム / 二成分制御系 |
研究実績の概要 |
A群連鎖球菌は、咽頭炎や猩紅熱を引き起こす原因菌である。劇症型への機序について様々な研究報告が出ているが、一向に完全解明に至っていない。そこで、劇症型が発症するにはA群連鎖球菌がヒトへ感染後、変化するための何らかの情報を受け取らなければならないと考えた。ここで外界情報を受け取る二成分制御因子の研究が進んでいる、Streptococcus mutansに着目した。A群連鎖球菌と同属のこの細菌は、乳酸、酪酸を産生し、歯にバイオフィルムを形成して虫歯を増悪させる。この細菌の二成分制御因子は酸感受とバイオフィルム形成に関与する。同様の仕組みがA群連鎖球菌に存在するかを調べると、A群連鎖球菌の二成分制御因子の一つであるspy1588遺伝子欠損株は、バイオフィルム産生低下、酸抵抗性の低下を示した。我々は、酸を感受する二成分制御因子と、それに関連する遺伝子群に変異が劇症型に生じていると考え、研究を現在進めている。 昨年度にSPY1588部分ペプチド発現用のpETベクターの作製と、コンピテントセル大腸菌の様々な組み合わせ、および精製法の改良を行った。最終結果として、pET32aベクターにSPY1588のインサートを組み込み、Rosetta Gami2(DE3)にそのベクターを導入した株が、目的産物をIPTGの誘導により強力に発現することが出来た。そしてこの後の目的産物の精製に困難を極めていたが、IPTG誘導後の大腸菌を超音波破砕と界面活性剤を使い分けて遠心分離処理を施すと、目的タンパク質の可溶化が可能になることが明らかとなった。この精製法の確立で、目的タンパク質の精製度が良くなり、タンパク質結晶化に実施するに値する目的産物を得ることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度にSPY1588部分ペプチドを発現すべく、pETベクターとコンピテントセルを組みあわせ、目的産物の大量産生系と精製系の確立を行った。その結果、pET32aにインサートを組み込み、Rosetta Gami2(DE3)に発現ペクターを導入した大腸菌株が、目的ペプチドを大量に産生することが出来た。この目的産物は封入体と思われたため、2種の界面活性剤と超音波処理、遠心分離を組みわせる事で可溶化することが可能になった。Niアフィニティーカラム精製によりほぼ単一バンドにまで精製が可能となった。ゲル濾過クロマトグラフィーにより夾雑タンパク質を除去し、結晶化に使用できうる単一な目的産物を得ることが可能となった。現在、Tagタンパク質を切断し、結晶化に必要な量を確保している。
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今後の研究の推進方策 |
今回の目的であるA群連鎖球菌SPY1588はヒスチジンキナーゼで膜タンパク質として存在している。様々な論文を参考に、膜タンパク質のヒスチジンキナーゼの精製方法をデータベースで検索したが、なかなかヒットしない。これは膜タンパク質の精製がそもそも困難であり、またこの目的タンパク質のコンピュータ解析による予測的立体構造より、構造が全く他のヒスチジンキナーゼで新規の構造をしているため、精製に困難なために論文に出てこないものと思われた。目的のSPY1588は、部分的に発現、精製が可能になり、立体構造を測定できうる物質まで精製できたため、最終的な構造まで明らかとし、論文にすることでその機能を示していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の研究にあたり、精製が困難であった目的タンパク質がようやく入手することに目処がついたため、その研究成果を論文にすべく、論文構成代金として別途金額を次年度仕様にしました。
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