研究課題/領域番号 |
18K08445
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 特任准教授 (20372881)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アジュバント / 粘膜免疫 / ワクチン / 糖型界面活性剤 / インフルエンザ |
研究実績の概要 |
ワクチン抗原の作製を行なった。インフルエンザウイルスは臨床分離株であるA/Iwate/1130/2009 (H1N1pdm)を元株としたマウス馴化ウイルスを用いた。インフルエンザウイルスを大量培養後、ショ糖密度勾配遠心法でウイルスを精製した。β-プロピオラクトンで不活化し、全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原(WIIV)を作製した。不活化の確認は生物学的製剤基準の不活化試験に準拠し発育鶏卵を用いて行い、感染性ウイルスは陰性であった。 これまで研究で界面活性剤の粘膜アジュバント効果は、界面活性剤とタンパク質とが複合体を形成しその複合体粒子サイズに影響されることを明らかにしてきた(Yoshino N et al. Scand J Immunol. 2018)。そこで、クロシン- WIIV複合体の粒子サイズを粒子径分析装置で測定した。WIIVの粒子サイズは164.4 nmであったのに対し、クロシン添加後の粒子サイズは332.7 nmであった。この結果からクロシンとWIIVが複合体を形成していることが推定された。また、免疫誘導に適した複合体粒子サイズは約200~500 nmであり、クロシン-WIIV複合体の粒子サイズはこの範囲内にあった。 クロシンの粘膜アジュバント効果を検討するために、最初にWIIVの免疫に用いる量を決定する必要がある。そこで、マウスに1、0.1、0.01μgのWIIVを経鼻投与した。1μgおよび0.1μgでは血液中および粘膜分泌液(鼻腔洗浄液、気管洗浄液)中にインフルエンザ特異的抗体を確認できたが、0.01μgでは抗体は検出されなかった。そのため、次年度以降の粘膜アジュバント効果の解析には1μgまたは0.1μgのWIIVを用いることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原の作製、界面化学的解析、インフルエンザ特異免疫の解析を当初の研究実施計画に従って順調に研究を遂行した。全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原を用いての界面化学的解析および動物実験を先行させたためスプリット型インフルエンザウイルス抗原での解析がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原を用いての解析を先行させたため、スプリット型インフルエンザウイルス抗原を用いての解析を行う。さらに、今後の研究では当初の予定通りインフルエンザ特異的抗体の量的解析のみならず質的解析を行うため、中和試験、交差反応試験を行う。また、クロシンの安全性に関する検討を並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:全粒子不活化インフルエンザウイルス抗原を用いてのクロシンの粘膜アジュバント効果の解析を先行させたためスプリット型インフルエンザウイルス抗原の作製に予定していた物品費が未使用となった。 次年度使用額の使用計画:スプリット型インフルエンザウイルス抗原作製のための物品費として使用する。
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