当該年度において以下の研究内容を実施し、新たな研究成果が得られたので報告する。 1.伴侶動物由来117株(2017年に分離)より無作為に抽出した犬レンサ球菌40株を用いてその人細胞内侵入能と微生物学的関連因子を評価した。また、人血液由来侵襲性2株も加えた。実験に供した細胞は人株化大腸上皮細胞(Caco-2)と人株化皮膚角質細胞(HaCaT)となり、本菌接種2時間後における細胞内菌量を計測した。カットオフ値を設定し、高侵入能19株と低侵入能24株に分類した。本菌が保有する溶血活性と高侵入能との関連性は見られなかったが、高侵入能とM-like proteinアレル型(10/11)やsequence type (ST21/ST41)との関連性を認め、本菌における系統クローンと高侵入能との連関が示唆された。薬剤耐性と侵入能との関連性は見られなかった。以上より、伴侶動物由来犬レンサ球菌は人細胞内への侵入能を有している可能性が示唆され、人獣共通病原菌としての新知見が得られた。 2.伴侶動物由来185株(2015年/2017年に分離)より無作為に抽出した犬レンサ球菌80株を用いてそのバイオフィルム形成能と微生物学的関連因子を評価した。また、人血液由来侵襲性2株/伴侶動物血液由来侵襲性1株も加えた。本菌におけるバイオフィルム形成能をクリスタルバイオレット染色後の吸光度に基づいて定量評価した。植物由来抽出成分となるベルベリンを用いてバイオフィルム形成能阻害活性も解析した。カットオフ値を設定し、同形成能保有35株と形成能非保有48株に分類した。その結果、形成能保有株は2017年に集中し、形成能とM-like proteinアレル型(10)やST21との関連性を認めた。形成能と線毛関連遺伝子/薬剤耐性遺伝子との連関も確認した。ベルベリンの1/2最小発育阻止濃度による形成能阻害活性が観察できた。本菌における系統クローンと形成能保有との連関が示唆された。
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