研究課題/領域番号 |
18K08454
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
伊奈田 宏康 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (90283522)
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研究分担者 |
河野 光雄 三重大学, 医学系研究科, 講師 (00234097)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 感染性胃腸炎 / ワクチン / ノロウイルス / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
ノロウイルスは、世界中で発症する感染性胃腸炎の主な原因ウイルスである。また災害時の避難所などでの発症の危険性も器具されている。我が国では、食中毒の代表的な原因病原微生物でもあり、感染したにもかかわらず発症しない、いわゆる不顕性感染が指摘されている。しかし、ノロウイルス感染症に対する根本的な治療法はなく、世界中でワクチンの開発が望まれている。 最近のノロウイルス感染症は、ノロウイルスGⅡ.4型あるいはその変異株が流行の中心である。本研究では、粘膜免疫の誘導可能な非増殖型ヒトパラインフルエンザウイルス2型(rhPIV2)ベクターを用いて、ノロウイルス(ノロウイルスGⅡ.4.2012シドニー株)の外殻タンパクを発現させたワクチンを作製した。さらに、より安全性が高くより安定した改良型のベクター作製し、改良型ベクターにノロウイルス外殻タンパクを組み込み、新たにワクチンを作製した。そして、ワクチンとして動物実験に使用可能な大量のワクチンの作製・精製を行った。高力価のワクチンをマウスに経鼻噴霧し、現在ワクチン効果を解析中である。 ノロウイルスは、ウイルスの細胞培養系が確立していない。そのため、本研究のワクチンが粘膜免疫を誘導しその効果が期待できるかどうかワクチンの可能性を検討するため、他の感染性胃腸炎の原因物質(毒素)に対するワクチンを作製し、効果の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
改良型のrhPIV2ベクターに組み込んだワクチンを作製したが、動物実験に用いるために十分な力価のワクチンを大量に作製するために、時間を要したが、実験に必要なワクチンの作製は終了した。また、推測されるワクチン効果が望まれる接種間隔および投与回数が必要であり、こられのため動物実験でによるワクチンの解析するためのサンプルを回収・解析にかなりの時間が必要であるが、おおむね研究は進展していると考えられる。今後、解析の結果を踏まえ、再度動物実験により検討をする場合は、新たにワクチンの大量作製・精製やワクチン接種等、同様に時間を要する可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ノロウイルス感染症は、小腸粘膜に感染し消化管粘膜の損傷を中心とした症状が主に出現すると考えられ、局所での免疫効果すなわち、粘膜免疫を中心とした免疫が感染予防などに重要な役割を果たす可能性を考えている。また、モデル動物を用いたノロウイルス感染症の実験系が確立されていないため、新規ワクチンが、消化管における粘膜免疫を誘導するかどうか、免疫学的な検討が必要である。しかし、ノロウイルスの研究は、一般にはバキュロウイルスによる発現系を用いたウイルス様粒子を用いられることが多く、ウイルスの増殖を確認する培養系は一般に確立されていないため、実際に粘膜免疫誘導の検討やワクチン効果の検討には困難な点も多い。 そのため、抗原タンパクが入手可能な他の感染性胃腸炎に対するワクチンを作製し、粘膜免疫の誘導とワクチン効果の検証を行い、ノロウイルスワクチンの可能性を検討する。また、粘膜免疫を誘導するサイトカインなどを同時に接種することで、長期的な粘膜免疫の持続効果などを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の価格変動などに伴い次年度使用が生じたが、当初の使用計画で実施する予定である。
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