ウイルス感染症は、予防および有効な治療薬が重要であり、特に予防の要であるワクチンの開発はとても重要である。ノロウイルス感染症をはじめ感染性胃腸炎も同様に、グローバル化した現状や災害が多い我が国においては、より有効で安全なワクチンが望まれる。 ノロウイルスは、世界中で発症する感染性胃腸炎の主な原因ウイルスである。我々は、粘膜免疫の誘導可能な非増殖型ヒトパラインフルエンザウイルス2型(rhPIV2)をベクターとして用い粘膜誘導型のワクチン開発を進め、より安全性が高くより安定した改良型ベクターを作製した。そこで、ノロウイルス(ノロウイルスGⅡ.4.2012シドニー株)の外殻タンパクを発現させたワクチンを作製し、また、コレラ菌外毒素のBサブユニット(CTB)を発現させたワクチンを作製し、それぞれワクチンの効果を解析した。 その結果、コレラ菌外毒素CTBに対する特異的な抗体の産生増加、小腸内水分量の減少などのワクチン効果が認められた。新規粘膜誘導型ワクチンは、経鼻投与により小腸粘膜免疫を特異的に誘導すること考えられ、感染性下痢症に有効なワクチンである可能性が示唆された。一方で、ノロウイルスに対する特異的な抗体は、今回検出されなかった。市販されているウイルス検出キッドには反応がみられたため、今回抗原として使用した2種類のペプチド、さらには市販のVLP(ウイルス様粒子)との反応が問題である可能性が考えられた。抗体価の測定方法の確立が必要である。 新規粘膜誘導型ワクチンは、経鼻投与により小腸粘膜免疫を特異的に誘導すること考えられ、感染性下痢症に有効なワクチンである可能性が示唆された。
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