研究課題/領域番号 |
18K08458
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
原田 恵嘉 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (30508643)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HIV / AIDS / 抗体 |
研究実績の概要 |
本研究は、HIV潜伏感染細胞(レザボア)の浄化すなわち治癒を目指した新規治療法戦略に対する基盤研究として、HIV感染者検体を用いて、ウイルス抑制、抗ウイルス治療効果、およびレザボアサイズ等の感染経過に対する感染者内在性抗体のADCC活性の影響を包括的に解析することを主目的とする。 本年度は、(i) ADCC活性測定系の最適化、および (ii) ADCC増強作用を目的とする抗HIV抗体増強剤ライブラリーの候補化合物の拡充を、各々開始した。まず、(i) ADCC活性測定系の最適化に関しては、先行臨床分離株から各抗HIV抗体を分離後、各臨床分離株パネルウイルスに対するADCC活性測定を試みた。最適化構築を各方法で展開した結果、最終的に市販キットを用いた応用方法を確立し、ハイスループット測定系を構築することができた。 他方、(ii) 抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充に関しては、化学構造骨格だけでなく、標的Envに対する結合領域も各々異なる「抗HIV抗体増強剤」カテゴリーおよびファーマコフォアを複数見出すことに成功した。中でも活性が顕著であった、① CD4類似低分子化合物(CD4mc)、② in silico guided hits、および③トリテルペン誘導体、の三カテゴリーに関して集中して開発を進めることができた(Sci. Rep. 2019, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2019, Bioorg. Med. Chem. 2018a, Bioorg. Med. Chem. 2018b)。 以上、(i) ADCC活性測定系の最適化、および (ii) 抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充、のいずれもが、進展し、次年度以降の解析研究の基盤を確実に整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を推進するための研究計画に関しては、「研究実績の概要」で示した通り、順調に進行している。具体的には、(i) ADCC活性測定系の最適化、および (ii) 抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充、のいずれもが、順調に進行し、それらの成果の一部は学術雑誌に報告することも出来た(Sci. Rep. 2019, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2019, Bioorg. Med. Chem. 2018a, Bioorg. Med. Chem. 2018b)。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で示したが、本年度、(i) ADCC活性測定系の最適化、および (ii) 抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充、が整ったので、次年度は、感染症例から分離した各抗HIV抗体を用いて、同時期に分離したautologusウイルスに対するADCC活性を評価し、感染ウイルスと誘導された抗HIV抗体の直接的な因果関係を解析する。加えて、中和抗体と結合抗体(ADCC抗体)の違いも含めて、各症例および各採血点の臨床検体に対して、抗体の標的ウイルス蛋白であるEnvゲノム配列を解析し、誘導された抗HIV抗体の感染ウイルスに対するADCC活性を明らかにする。同時に、ADCC活性を惹起し、レザボアの浄化すなわち治癒を目指す新規治療法戦略に繋げる基盤データの取得を試みる目的で、抗体の標的ウイルス蛋白であるEnv蛋白のエピトープ遮蔽構造(耐性構造)を解除する特異的構造変化誘導剤ライブラリーと感染症例サンプルの基盤研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
「今後の研究の推進方策」においても示したが、次年度は、使用する感染症例の数を増やし、臨床検体に対して、ウイルス抑制、抗ウイルス治療効果、およびレザボアサイズ等の感染経過に対するADCC活性の影響を包括的に検証していく予定であり、本年度よりも消耗品の使用の大幅な増加が予想されたため、本年度の研究費の一部を次年度に使用することにした。
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