本研究は、HIV潜伏感染細胞(レザボア)の浄化すなわち治癒を目指した新規治療法戦略に対する基盤研究として、HIV感染者検体を用いて、ウイルス抑制、抗ウイルス治療効果、およびレザボアサイズ等の感染経過に対する感染者内在性抗体のADCC活性の影響を包括的に解析することを主目的とする。 最初に、「ADCC活性測定系の最適化」を進め、市販キットを応用したNFTA (Nuclear factor of activated T cells) 経路を測定するハイスループットバイオアッセイに加えて、NK細胞株を用いた標的細胞の細胞障害性を測定する系も確立することができた。同時に、ADCC活性増強を目的とする「抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充」を展開し、化学構造骨格だけでなく、標的Envに対する結合領域も各々異なる「抗HIV抗体増強剤」カテゴリーおよびファーマコフォアを複数見出すことに成功した。中でも活性が顕著であった、① CD4類似低分子化合物(CD4mc)、② in silico guided hits、および③トリテルペン誘導体、の三カテゴリーに関しては、活性・製造・デリバリーの各最適化を展開することができた。そして、これら最適化したADCC評価系を用いて、臨床検体由来血清におけるADCC活性、レザボアサイズ、および各種パラメーターの各種解析を進めるとともに、ADCC活性増強試験を行うこともできた。以上、「ADCC活性測定系の最適化」、「抗HIV抗体増強剤ライブラリーの拡充」、および「臨床検体に対する各種解析」を進展することができ、臨床検体におけるADCC活性知見およびADCC活性を惹起させる新規治療法開発の基盤データを得ることができた。
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