研究課題/領域番号 |
18K08462
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
水上 浩哉 弘前大学, 医学研究科, 教授 (00374819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 2型糖尿病 / 一塩基多型 / 遺伝 / β細胞減少 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病(T2DM)の発症機序の一つに膵島細胞機能不全がある。その原因に膵島内β細胞容積の低下とα細胞容積の増加がある。しかしながら、患者における膵島病理をin vivoで観察できる手段は未だ開発されていない。T2DMにおける膵島病理学的変化は高血糖を初めとする代謝的要因により研究されている。現在、代謝的要因のみならず遺伝的素因、即ち疾患感受性遺伝子の遺伝子多型(SNPs)もT2DMの重要な素因であることがわかってきている。だが、これらSNPsがヒトの膵島にどのような病理学的変化をもたらすかは未だよくわかっていない。そこで本研究では、遺伝因子による膵島病理学的変化を検討することによりT2DMの新たな病態解明、治療法の確立のみならず、T2DM膵島病理学的病変の予測バイオマーカーとしてのSNPsの可能性を探索する。本年度は以下の検索を行った。 1. 剖検症例の選択(標本の収集、選別):弘前大学附属病院の剖検症例から、T2DM症例を22症例、非T2DM症例を50症例を選択した。選択条件としては、膵臓病理学的探索が可能なもの、十分な臨床情報があるもの、肝臓、腎臓など凍結検体があるものとした。これは網羅的SNPs解析にはパラフィン包埋切片ではDNAの変性が起こり、結果が変わる可能性があることによる。 2.病理学的解析:膵島細胞/アミロイド容積、細胞動態の解析を行う。膵臓切片を用いて①膵島の各内分泌細胞容積、②膵島細胞の増生能、③膵島細胞死、④膵島細胞の新生能を検討した。既報と同様に、2型糖尿病でβ細胞容積の減少、α細胞容積の増加、膵島新生の増加を認めた。 3.SNPs解析:剖検時に採取した肝臓、腎臓組織からgenomic DNAを抽出した。DNAの品質を確認後、東芝にジャポニカアレー(東芝)にて、72症例のDNAのSNPsを網羅的に検討した。72症例からのSNPsデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的SNPsアレ-はパラフィン包埋切片では結果の正当性が担保できないとのことであった。通常の剖検では凍結検体は保存せず、パラフィン包埋切片で検体は保存される。そのため、既存の剖検標本は今回の検討には用いることが出来なかった。したがって、凍結臓器をもつ症例が十分量得られない可能性が懸念された。しかしながら、最終的に72症例の凍結標本を持つ症例を確保できた。網羅的SNPsアレーも無事施行でき、現在その結果を解析中であることから、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.症例数の増加 現在72症例の剖検症例のSNPs解析が終了している。しかしながら、症例数が十分ではないため、剖検検体にもよるが、今年度で20症例追加してSNPsの解析を行う予定である。 2.SNPsと臨床病理学的所見との相関 得られたSNPsは膨大である。2型糖尿病の発症、進展と関連のある遺伝子を中心に、膵臓の病理学的変化との相関を検討する。統計解析に不明点がある場合は、東芝もしくは本学の社会医学講座のCOI部門の統計チームに相談して、統計解析についての示唆を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
ジャポニカアレーのための症例が目標よりも少ないため差額が生じた。次年度も引き続き今年度できなかった分、ジャポニカアレーによるSNPs解析に予算を使う予定である。
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