2型糖尿病(T2DM)の発症機序の一つに膵島細胞機能不全がある。その原因に膵島内β細胞容積の低下とα細胞容積の増加がある。しかしながら、患者における膵島病理をin vivoで観察できる手段は未だ開発されていない。T2DMにおける膵島病理学的変化は高血糖を初めとする代謝的要因により研究されている。現在、代謝的要因のみならず遺伝的素因、即ち疾患感受性遺伝子の遺伝子多型(SNPs)もT2DMの重要な素因であることがわかってきている。だが、これらSNPsがヒトの膵島にどのような病理学的変化をもたらすかは未だよくわかっていない。そこで本研究では、遺伝因子による膵島病理学的変化を検討することによりT2DMの新たな病態解明、治療法の確立のみならず、T2DM膵島病理学的病変の予測バイオマーカーとしてのSNPsの可能性を探索する。本年度は以下の検索を行った。 1. 剖検症例の選択(標本の収集、選別):これまで72剖検症例のSNPs解析を行ってきた。その後に蓄積された39症例の弘前大学附属病院の剖検症例から、T2DM症例を10症例、非T2DM症例を29症例を選択した。選択条件としては、膵臓病理学的探索が可能なもの、十分な臨床情報があるもの、肝臓、腎臓など凍結検体があるものとした。 2.病理学的解析:膵島細胞/アミロイド容積、細胞動態の解析を行う。膵臓切片を用いて①膵島の各内分泌細胞容積、②膵島細胞の増生能、③膵島細胞死、④膵島細胞の新生能を検討した。既報と同様に、2型糖尿病でβ細胞容積の減少、α細胞容積の増加、膵島新生の増加を認めた。 3.SNPs解析:剖検時に採取した肝臓、腎臓組織からgenomic DNAを抽出した。DNAの品質を確認後、東芝にジャポニカアレー(東芝)にて、39症例のDNAのSNPsを網羅的に検討した。39症例からのSNPsデータが得られた。
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