研究課題
p53下流遺伝子であるDPYSL4が、脂肪細胞とがん細胞においてどのようにミトコンドリア超複合体と会合し、その制御に関わる役割を検討した。まず、がん細胞にDPYSL4を外因性に強制発現させた系におけるミトコンドリア超複合体解析から、DPYSL4は複合体I/III2/IVnに存在することが観察された。また、メタボローム解析からDPYSL4 ノックアウト細胞では、フマル酸・コハク酸の増加という好気的回路の抑制を認めるものの解糖系代謝産物への変化はほとんど見られず、ミトコンドリア制御を裏付ける結果が得られた。次に、正常細胞である脂肪細胞での内因性DPYSL4の発現とミトコンドリア複合体解析を行い、同様に複合体I/III2/IVnに存在することを明らかにした。この時の、脂肪細胞におけるミトコンドリア呼吸機能をフラックスアナライザーを用いて解析した。CRISPR/Cas9によるDPYSL4 ノックアウト脂肪細胞を用いた酸素消費解析から、ノックアウトはWTに比べて酸素消費の低下を認めた。逆に、脂肪細胞へのDPYSL4の強制発現で、酸素消費とATP産生の増加を認め、DPYSL4の変異体の導入では、酸素消費やATP産生の増加作用を認めなかった。これらの結果は、これまで行ったがん細胞での結果と同様であった。また、脂肪細胞の機能として、興味深いことにDPYSL4 ノックアウト脂肪細胞は、脂肪的貯留の抑制がオイルレッドO染色で観察された。そして、この時の遺伝子発現では、adiponectin、Leptinなどアディポサイトカイン、PPARγ、脂肪酸合成に必要な遺伝子群の発現が低下した。これらのことは、DPYSL4の脂肪における作用機序として、ミトコンドリア超複合体での酸素消費を介したエネルギー調節を行うことで、脂肪酸合成に必要なバイオマスの供給している可能性が示された。したがって、脂肪機能制御の1分子としてDPYSL4は脂肪機能異常の表現型である肥満病態で何らかの役割を担うことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
理由すでに樹立したCRISPR/Cas9によるDPYSL4ノックダウン脂肪細胞作製の系を用いて、前駆脂肪細胞から脂肪細胞分化誘導時の遺伝子発現の変化や含有脂肪適量の計測による脂肪分化の変化を観察することができた。また、in vivoでの解析として、マウスにおけるがん抑制能を観察する病態モデル作成を行う。これについては、現在ノックアウトマウスを作成中である。
in vitroからin vivoへ拡大して、DPYSL4が脂肪細胞機能や生体における腫瘍形成に与える影響を観察する。現在、DPYSL4ノックアウトマウスはコマーシャルベースでは存在せず、ターゲッティングベクターの作成、B6由来ES細胞への導入を通じて、ノックアウトマウス作成の準備段階に入っている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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