研究実績の概要 |
近年,全ゲノム関連解析(GWAS)によって2型糖尿病疾患感受性遺伝子が続々と同定され,その数は70を超えている. 2008年に我々を含む2つのグループは,電位依存性カリウムチャネルKCNQ1が2型糖尿病疾患感受性遺伝子であることを見出し報告した.このことはその後の多くの検討でも追試され,KCNQ1はヒトにおいて普遍的かつインパクトの大きい2型糖尿病疾患感受性遺伝子であることがコンセンサスとなっている.さらに,2010年にパネル数を増加させ検出感度を上げることによりユビキチン結合酵素UBE2E2とC2CD4A/Bを同定した.特にUBE2E2は,欧米人では2型糖尿病との相関が認められず,日本人・アジア人に特有の疾患感受性遺伝子であると推察され,インスリン分泌に関連しており,そのPopulation Attributable RiskがKCNQ1と並んで日本人2型糖尿病疾患感受性遺伝子の中でも重要であると考えられた.その後もアジア人を対象とした解析で,KCNQ1とUBE2E2のSNPがインスリン分泌低下を伴う耐糖能異常と関連していることが追認されている.インスリンを分泌する膵β細胞で電位依存性カリウムチャネルとしてのKCNQ1やユビキチン結合酵素としてのUBE2E2が担う生理的・病態生理的役割を解明することは,2型糖尿病の発症機構のより深い理解と早期の診断法・最適な治療法の開発において重要な研究課題であるが,そもそもヒトにおける「インスリン分泌低下」という表現型が,KCNQ1・UBE2E2の発現や機能の亢進あるいは低下によるものか,未だ明確な結論が得られていない.そこで我々は本研究で, KCNQ1・UBE2E2に着目して疾患モデル動物を作製・解析することを通じて, 2型糖尿病疾患感受性遺伝子が膵β細胞で担う役割をin vivoで明らかにすることを目指す.
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