所属研究室は脂質異常症を専門とし、原発性脂質異常症の診療に従事する中、これまで希少疾患(原発性高カイロミクロン血症、無βリポ蛋白血症など)の遺伝子変異を同定してきた。これら希少疾患の病態は合併症を含め未解明の課題も残されており、最適な治療法の確立は今後の重要課題である。高カイロミクロン血症 は有効な根本的治療法は確立されておらず、頻回に急性膵炎を発症する。中性脂肪の水解を担うLPLの補因子であるapoC-IIは完全欠損に限り著明高カイロミクロ ン血症を呈するとされてきたが、我々は完全欠損とは異なり、apoC-II蛋白の血清濃度低下による高カイロミクロン血症を見出した(hypoapoC-II)。同疾患のapoC-IIは二次元電気泳動とイムノブロットから正常構造を呈すると示され、末梢血単球由来マクロファージを用いた解析により転写レベルでのAPOC2減少の可能性が示された。APOC2蛋白翻訳領域に遺伝子変異は認めず、全ゲノム解析により、APOC4(APOC2 5'側に隣接する遺伝子)全領域とAPOC2 non coding exon 1を含む約6kbの partial duplicationが示された。追加症例を含めた解析により同構造変異のホモ接合型が本疾患を招くと示され、更に、同構造変異は創始者効果をもつと示されたことから、本邦に散在する可能性が示唆された。APOC2遺伝子にレポーターを連結しプロモーター解析を行い、同構造変異の責任領域の特定を行なっている。
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