研究課題/領域番号 |
18K08468
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
恒枝 宏史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
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研究分担者 |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病 / エネルギー・糖脂質代謝異常 / 脳・神経・嗅覚 / 生体リズム |
研究実績の概要 |
中枢性代謝調節機構を標的とした糖尿病の新規治療法の開発を指向して、本研究では嗅覚系の機能に着目した。食餌の知覚情報は頭相応答として急性的に消化・吸収・代謝を促進することは古くから知られているが、嗅覚系を起点とした頭相応答機構が糖・脂質代謝の調節や糖尿病の発症に及ぼす影響は不明である。そこで本年度は、マウス嗅覚系の刺激と破壊が糖・脂質代謝に及ぼす影響を解析し、嗅覚系による糖・脂質代謝調節機能の存在を実証することを目的とした。まず、マウスに嗅覚情報を的確に伝達可能な食餌性嗅覚刺激装置を開発し、その実用性を実証した。本装置を用いて嗅覚と糖・脂質代謝の関連を解析した結果、絶食下での食餌性嗅覚刺激により血中遊離脂肪酸濃度が増加すること、また、糖負荷試験で評価した耐糖能には変化がないが、ピルビン酸負荷試験では肝糖新生活性が抑制されることを見出した。次に、嗅覚消失が代謝機能に及ぼす影響を検証するため、嗅球摘除による嗅覚消失マウスに長期間高脂肪食(HFD)を負荷した。対照(偽手術)群との比較の結果、嗅覚消失により短期間のHFD負荷時では耐糖能が改善したが、長期間のHFD負荷時では逆に耐糖能異常とインスリン抵抗性が増悪した。したがって、嗅覚系は食餌性肥満により誘発される糖代謝異常を防止することが示された。なお、自発運動量やエネルギー消費量には差異を認めなかった。このように本研究では、食前の食餌の匂い刺激は代謝適応を誘発し、エネルギー源を糖から脂肪酸に変換することが示唆された。また、長期的な嗅覚破壊が肥満に伴う耐糖能異常を増悪させることから、嗅覚系はエネルギー恒常性の維持に重要な役割を果たしており、その破綻は2型糖尿病などの代謝異常を誘発すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書において、補助事業期間中の研究実施計画に記載した通り、本年度は「嗅覚系による糖・脂質代謝調節機能の存在の解析」を実施した。その結果、研究開始時点で予測した通り、嗅覚刺激や嗅覚破壊に伴いマウスの糖・脂質代謝機能が変化することを見出し、その変化を定量的に検出することに成功した。このように本年度の研究において、嗅覚系を活用することで中枢性代謝調節機構を能動的に制御できる可能性がさらに高まったことから、2019年度以降も引き続き、「嗅覚-代謝系を制御する中枢機構」や「2型糖尿病マウスの代謝異常に対する嗅覚刺激の予防・治療効果」の解析を計画通り実施することが可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書において、補助事業期間中の研究実施計画に記載した通り、本研究の第2ステップとして、「嗅覚-代謝系を制御する中枢機構」を検証する。そのため、中枢性代謝調節に異常を示す各種遺伝子変異マウスに対して食餌性嗅覚刺激を行い、嗅覚を起点としたエネルギーバランスの変化を小動物用代謝測定システムで解析し、嗅覚系と代謝系の連係を仲介する脳内機序を明らかにする。また、食餌性肥満マウスの糖代謝機能が嗅覚消失に伴い変化する機序を解明するため、GeneChipを用いて嗅球摘除マウスの肝臓の遺伝子発現変化を網羅的に解析する。さらに本研究の第3ステップとして、「2型糖尿病マウスの代謝異常に対する嗅覚刺激の予防・治療効果」の解析に着手する。糖尿病病態では概日リズムの攪乱と嗅覚機能の低下が認められるので、日周性の嗅覚刺激により生体リズムの形成を強化することで、代謝異常が改善できるかを検証する。このように補助事業の最終年度(2020年度)において一定の結論が得られるよう配慮しつつ、研究を推進する。
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