研究課題/領域番号 |
18K08471
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁弥 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (20293417)
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研究分担者 |
弘瀬 雅教 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (40273081)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脂質シグナル / 脂肪滴 / コネキシン43 / リモデリング / 心房細動 |
研究実績の概要 |
マウス心筋におけるPlin2の過剰発現は、心房筋細胞内の脂肪滴蓄積とコネキシン(Cx)43のリモデリングを惹起し、心房細動(AF)の誘発率を上昇させる。昨年度に続きコネキシン43のリモデリング機序を解明するため以下の実験を行った。 1) Plin2蛋白を過剰発現するが脂肪滴を蓄積しないPlin2+HSL-Tgマウスを作成し、心房筋の脂質とAF誘発率を検討した。その結果、Plin2+HSL-Tgマウスでの心房筋トリグリセリド(TG)含量は野生型(Wt)同等まで減少し、AF発生率はTgより約60%低下した。この結果よりAF発症にはPlin2蛋白より脂質が重要であることが確認された。 2) Cx43のリモデリングに関与する脂質を探索するため、老齢のPlin2-Tg・Wtマウスの心房より脂質を抽出して液体クロマトグラフィー/質量分析法とLipidSesarchTM softwareによりリピドーム解析を行った。その結果、Tgの心房ではWtと比較して1種のセラミド、10種のDAGと100種のTGが2倍以上増加しており、これらの中に候補脂質が含まれると想定した。 3) Cx43のリモデリングに関与する遺伝子を探索するため、Plin2-Tgマウスの心室で行ったmicroarrayデータを用いてTgの心室で変化した遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った。その結果、Cx43のリモデリングに関与する候補遺伝子として転写因子のN10/Nur77とC/EBPbetaが抽出された。 4) 脂肪滴蓄積によるAFに対する治療法を探索するため、GLP-1レセプターアゴニスト(GLP-1Ra)の効果を検討した。その結果、GLP-1RaはPlin2-Tgの心室、心房両方のTG含量を低下させ、遷延性AF率も低下させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Plin2-Tgマウス心房のリピドーム解析からCx43のリモデリングに関与する脂質候補を抽出し、これらがコネキシン43のリモデリングを惹起するかを検討している。しかし、Cx43の局在性を効率良く明確に検証することは予想以上に困難で、新しい実験系を確立することが必要であると思われた。現在有効な実験方法を検討中である。 一方でAFの治療法に関しては脂肪肝を軽減させる効果のあるGLP-1RaをPlin2-Tgマウス投与した。その結果、GLP-1Raを投与されたTgマウスでは心室・心房のTG含量が減少し、AF誘発率も低下した。これらの結果は予想以上であり、現在確認実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1) Cx43のリモデリングに関与する候補脂質をマウスまたは心筋細胞に与え、Cx43の局在性を解析する。 2) Tg/Wtマウスの心房においてDAGのターゲットであるPKCの活性化を解析する。 3) GLP-1Raをマウスに投与して心房筋におけるCx43の局在性を検討する。 4) 得られた実験結果を論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスのAF誘発実験が順調に進行したため、実験の際に使用する薬剤や消耗品、カテーテル等の使用量が当初の予定より少なく済んだ。次年度使用額は令和2年度に予定しているAF誘発確認実験の費用として計上する予定である。
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