研究課題
脂肪的表面に局在する蛋白Perilipin 2 (PLIN2)をマウス心筋に過剰発現させると、心房筋細胞内に脂肪滴が蓄積してgap junction蛋白コネキシン(Cx)43が細胞側壁に局在し、心房細動(AF)の誘発率を上昇させる。Cx43のリモデリング機序とその治療法を探索し、以下の結果を得た。老齢の心筋特異的PLIN2過剰発現マウス(Tg)および野生型(Wt)マウスの心房より脂質を抽出してリピドーム解析を行い、Tgで変化した脂質プロファイルを詳細に解析した。Tgの心房ではWtと比較して100種のトリグリセリド(TAG)が2倍以上増加していたが、その上位10種中9種は構成脂肪酸に(22:5)かつ/または(22:6)を含んでいた。また、Tg心房のリン脂質プロファイルはWtと比較してフォスファチジルコリンが30%増加していた。以上の結果よりCx43リモデリングに関与する因子としてセラミド、DAGに加えてω3脂肪酸を含むTAGの増加とリン脂質プロファイルの変化が重要であると思われた。脂肪滴誘発AFに対する加齢の影響を検討するため、月齢4ヵ月のマウスを用いて検討した結果、AF率はWtとTgでは同等で、Cx43の介在版局在性も差を認めなかった。この結果、agingに伴うリモデリングなどの要素が脂肪滴誘発AFに必要であることが判明した。脂肪滴蓄積によるAFに対する治療法を探索するため、GLP-1レセプターアゴニスト dulaglutideの効果を検討した結果、dulaglutide週2回、8週間の投与はTgの心室、心房両方のTAG含量を50-60%低下させ、AF誘発率を45%、AF持続時間を60%低下させた。これらの結果を論文にまとめ、投稿準備を行っている。
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