研究課題/領域番号 |
18K08473
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 僚一 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (80597865)
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研究分担者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 報酬系 / 高脂肪食 / PTP1B / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
野生型マウスに高脂肪食投与に伴い、報酬系を構成するVTA(中脳腹側被蓋野)およびNAc(側坐核)においてグリア細胞の活性化および炎症が生じることを確認し、インスリンもしくはレプチンを中枢投与し、各々の領域でインスリンおよびレプチン抵抗性が生じていることを確認した。 Cre-loxPシステムを用いて組織特異的protein tyrosine phosphatase-1B(PTP1B)欠損マウスを作成した。ドーパミンニューロン特異的にCreが発現するDopamine transporter Cre マウス(Jack stock #006660)もしくは側坐核を含む線条体ニューロン特異的にCreを発現するGpr88 Creマウス(理化学研究所 Hisatsune C et al., 2013 Transgenic Res)とPTP1B flox/floxマウス(米国ペンシルバニア大学 教授 Kendra Bence博士より移譲)を交配させて野生型、ヘテロ接合型およびホモ接合型マウスを作成した。次に、VTAもしくはNAcを含む脳切片を作成し、PTP1Bの発現について組織学的手法(免疫染色)を用いて野生型とホモ接合型の両群間で比較検討しホモ接合型において組織特異的にPTP1Bが欠損していることを確認した。更にVTAもしくはNAcを含む領域からDNAを抽出し、所定のプライマーを使用してPCR法にてloxP配列の組み換えが生じていることを確認した。また、生後3週から雌雄ともに高脂肪食を投与し、体重変化を8週齢まで測定し野生型とホモ接合型の両群間で比較検討した。その結果、8週齢までにおいて両群間に体重差を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高脂肪食投与に伴い脳内報酬系においても炎症が生じてインスリンおよびレプチン抵抗性が生じることを確認し、報酬系を構成する中脳腹側被蓋野および側坐核を含む線条体でPTP1Bを欠損させたマウスを作成することに成功した。PTP1B欠損によって、炎症は減弱し、インスリンおよびレプチン抵抗性が改善するため、高脂肪食投与による肥満に対し如何なる影響を及ぼすのか8週齢まで検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、体重測定を継続し、20週齢で淘汰する。内臓脂肪、皮下脂肪の重量、脂肪細胞のサイズを測定し、エネルギー消費の測定には運動量測定装置およびマウス代謝計測システムを用い、マウスの自発運動量、酸素消費量、二酸化炭素排出量および呼吸商を評価する。また、視床下部の摂食関連ペプチド(AgRP、POMC)のmRNA発現についてもRT-PCR法で評価する。さらに、レプチン、インスリンもしくはブドウ糖を腹腔内投与して、それぞれレプチン感受性、インスリン感受性もしくは耐糖能について各群間で比較検討する。 高脂肪食を用いて条件付け位置嗜好性試験(CPP)を行い、野生型マウスと組織特異的PTP1B欠損マウスでCPP scoreを測定して両群間における高脂肪食への嗜好性の違いを評価する。次にレプチンもしくはインスリンを脳室内投与して同様の評価を行い、VTAおよびNAcにおけるStat3もしくはAktのリン酸化をウエスタンブロット法および免疫染色法でそれぞれ評価する。更に、tyrosine hydroxylase、ドーパミン受容体のmRNAおよび蛋白発現についてRT-PCRおよびウエスタンブロット法を用いて評価し両群間で比較検討する。 VTAもしくはNAcにおけるミクログリアおよびアストロサイトについて、それぞれIba-1抗体およびACSA-II抗体を用いて免疫染色し、高脂肪食投与に伴う形態および数の変化を経時的に観察し両群間で比較検討する。Magnetic-activated cell sorting法を用いてVTAもしくはNAcからグリア細胞を単離して炎症関連サイトカインのmRNA発現をRT-PCR法で評価、また、グリア細胞とニューロンの形態学的相関を電子顕微鏡で評価し同様に検討する。
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