研究課題
チロシンフォスファターゼであるProtein tyrosine phosphatase 1B(PTP1B)はレプチン、インスリンおよび炎症シグナルを調節する酵素である。我々は本研究課題においてGFAP Creマウスを用いた検討でアストロサイト特異的にPTP1Bを欠損させると高脂肪食投与下において視床下部炎症の抑制を介して肥満抵抗性をきたすことを確認した。また、ブドウ糖負荷試験を行った結果、体重差とは独立して耐糖能が改善することも確認した。GFAP Creマウスの特性として胎生期にGFAPが神経細胞で一過性に発現する可能性が指摘されており、表現型の解釈が限定的であることから、タモキシフェン誘導性GFAP Creマウス(GFAP-CreERT2)を用いてアストロサイト特異的PTP1B欠損マウスを作成し表現型を解析した。GFAP-CreERT2マウスとPTP1B floxマウスを交配して得られた雄性マウスに高脂肪食を投与後10週齢からタモキシフェンを投与してadult onsetのアストロサイト特異的PTP1B欠損マウス(KO)を作成した。高脂肪食投与下で4週間に渡り体重を測定しコントロール群(WT)と比較検討した。その結果、タモキシフェン投与終了後2週目以降、KOはWTと比較して体重増加の有意な抑制を認め、GFAP-CreERT2マウスを用いた結果とGFAP Creマウスで得られた結果は同じであることが確認された。また、高脂肪食投与下における視床下部のミクログリアおよびアストロサイトの炎症性サイトカインの発現についてmagnetic-activated cell sortingを用いて検討したところ、高脂肪食投与早期においてアストロサイトは抗炎症性サイトカインIL-10を分泌することによって高脂肪食摂取に伴う視床下部炎症を抑制する作用のあることが確認された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Neurochemistry International
巻: 136 ページ: 1-9
10.1016/j.neuint.2020.104733.