われわれは、スフィンゴシンキナーゼ1-インターアクティングタンパク質(SKIP)が膵臓ベータ細胞に発現しており、SKIPを欠損させるとグルコース刺激によるインスリン分泌が促進されることを明らかにした。また、SKIPは腸管のK細胞およびL細胞にも発現しており、SKIP欠損マウス(SKIP-/-)では、胃抑制ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)およびインスリンの分泌が野生型マウスに比べて有意に増加し、血糖値が低下することを証明した。さらに、SKIP-/-マウスでは、血清トリグリセリド(TG)レベル、LDLコレステロールレベルが低下し、脂肪組織、肝臓、腸における炎症性サイトカインのmRNAレベルが有意に低下していた。SKIP-/-マウスでは、GIPを遺伝子レベルで欠損させることにより、SKIP-/-マウスで認められた脂肪細胞の増加やベーサルレベルの炎症の抑制などの表現型の特徴が失われた。SKIP-/-マウスの耐糖能と脂質プロファイルの改善は、GLP-1受容体拮抗薬であるエキセンジン-(9-39)の投与によってキャンセルされた。以上から、SKIPを欠損させると、インスリンやインクレチンの分泌が促進されて耐糖能が改善され、脂質代謝が改善され、ベーサルの炎症レベルが低下することがわかった。このように、スフィンゴシンキナーゼ1-interacting proteinはインスリンとインクレチン分泌の二重の制御因子であり、SKIPの作用を阻害することは、代謝機能障害を伴う2型糖尿病の治療のための新たな選択肢となる可能性がある。今後、小分子による薬剤候補を選択し、新たな研究を進めていきたいと考えている。
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