研究課題/領域番号 |
18K08475
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 裕之 京都大学, 環境安全保健機構, 助教 (50437274)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵β細胞イメージング / 糖尿病 / 膵β細胞量 |
研究実績の概要 |
本年度は、開発中の放射性同位元素標識プローブを用いた膵β細胞定量方法に向けて ex vivo 及びin vivoでの検討を行った。プローブを用いて定量評価を行うためには、開発プローブが膵β細胞に特異的に集積し、定量性を有することを示す必要がある。そのために、まず、膵β細胞の定量評価の可能性について検討を行った。マウスインスリンプロモータ下にGFPを発現するコンストラクトを導入したMIP-GFPにプローブを投与し、プローブの集積を確認した。また、非RI標識のプローブ前投与によるブロッキング処理を行うことで、膵島へのプローブの集積が抑制されたことからプローブの特異的な集積を確認した。次にプローブを投与した膵臓を摘出・切片化することでAutoradiographyを行った。切片における膵β細胞由来のGFPの蛍光強度とプローブの膵β細胞への集積由来の放射能の関係を評価し、強い相関を示すことを確認した。このことにより、プローブの膵β細胞への集積が定量的であることが示された。次に、1型糖尿病モデルマウスであるNODマウスを用いてin vivoでの定量評価方法の検討を進めた。糖尿病の進行度合いの異なるNODマウスにプローブを投与し、膵臓を摘出・切片化を行った。切片をインスリン染色することで既存の面積からの膵β細胞量の算出方法と本手法での算出膵β細胞量の比較を行った。その結果、両者の間で強い相関を示すことが明らかとなった。このことは、本手法による膵β細胞量算出が可能であることを示唆する結果となった。今後、本手法の有用性についてさらなる検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究進捗は、当初計画に従い、順調に進んでいる。 まず、膵β細胞の定量評価の可能性についての検討として、MIP-GFP マウス(マウスインスリンプロモーター下にGFP を導入したマウス:膵β細胞特異的にGFP を発現する)にプローブを投与後、摘出した膵臓を切片化しAutoradiography を行い、その切片における蛍光強度(膵β細胞由来)と集積放射能(プローブの膵β細胞への集積由来)の関係(相関)を評価し、強い相関を示すことを示した。 つぎにプローブの膵臓への集積と既存の免疫染色法(病理評価)による膵β細胞量との関係について1型糖尿病モデルであるNODマウスを用いて検討を行い、良好な相関を示すことができた。以上、当初の計画に沿った結果を得ることができているため、来年度に向け研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
放射性同位元素標識プローブを用いた核医学的手法の強みは、蛍光標識プローブより感度よく検出可能であり、かつ、将来的な臨床応用を見据えることができる点である。また、本研究の最も大きな特徴は、同一個体において膵β細胞量を縦断的に追跡が可能である点である。そのため、まず、平成30年度の成果を基に研究を継続する。NODマウスを用いて糖尿病発症前後における膵β細胞量の評価を同一個体で行う。マウスが、正常血糖時、および高血糖を呈する際にプローブ投与によるSPECT-CT撮像を行い、膵β細胞量の比較を実施する。その際に、膵β細胞量と血糖値の関係について検討を行う。つぎに正常血糖状態から高血糖状態まで緩やかに糖尿病を発症する糖尿病モデルマウスを用いて血糖値と膵β細胞量の関係をより詳細に解析する。具体的には、本イメージングプローブを用いて2-3週ごとにSPECT撮像・画像解析による膵β細胞量の評価を行う。同時に各撮像のタイミングに合わせて血糖値や耐糖能についても評価する。
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