研究課題/領域番号 |
18K08476
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鷹見 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90621756)
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研究分担者 |
樂木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20252679)
中神 啓徳 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20325369)
華山 力成 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (40403191)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | myoferlin / 脂肪分化 / マクロファージ / 脂肪炎症 / インスリン抵抗性 / 肥満 / 酸化ストレス / 老化 |
研究実績の概要 |
これまでの我々の検討ではWTに比しMYOF KOでは、普通食の若齢では体重や摂取量に変化はないが、耐糖能障害、インスリン抵抗性を認め、脂肪組織においては脂肪細胞のサイズの低下、インスリンシグナルの減弱、血中レプチンやアディポネクチンの低下を認め、partial lipodystrophy様の表現型を呈するが、褐色脂肪細胞機能や活動量の変化を伴わず最大酸素摂取量の増加を認めた。一方、高脂肪食負荷による肥満モデルにおいては摂食量、活動量は変わらないが、MYOF KOはWTに比し体重増加、内臓脂肪の肥大および脂肪肝の悪化が有意に抑制され、同様に褐色脂肪細胞機能の変化を伴わず酸素摂取量も上昇していることを見出した。また、WTに比し、MYOF KOでは肥満モデルにおける耐糖能障害とインスリン抵抗性の悪化が抑制され、内臓脂肪でのMCP-1などの炎症性サイトカインの発現抑制やインスリンシグナル減弱の抑制、酸化ストレスや老化マーカーの抑制など保護的な作用が認められた。in vitro の実験系ではMYOFをノックダウンした脂肪前駆細胞3T3-L1細胞やMYOF KO由来の初代脂肪前駆細胞ではインスリンによる脂肪分化や増殖が抑制され、その下流のインスリンシグナルも減弱することを見出した。また、WTに比し、MYOF KO由来の腹腔Mφでの炎症も抑制されていることが分かった。更に、マウスの脂肪組織においてMYOFは加齢に伴い発現が減少するが、高脂肪食負荷により発現が維持され、MYOFの発現制御に関わる転写因子であるNFATがその発現調節に関与している可能性が考えられた。 脂肪前駆細胞において正常な成熟脂肪細胞への分化、増殖に関与する一方で、肥満病態においてはMφにおけるMYOFの機能も相まって、脂肪炎症や老化を促進する可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の結果に示したように、2019年度も2018年度に引き続き、新規に見出したMYOFの脂肪組織における機能を中心に検討を行ってきた。当初の予定ではマクロファージのMYOFの肥満病態での機能について、リソソーム酵素の放出、脂肪融解によるマクロファージの泡沫化に伴う脂肪炎症、インスリン抵抗性の悪化の関与の観点から検討する予定であったが、今年度は予定通りに遂行できなかった。その点でやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1)肥満病態でのMφのMYOFによるリソソームの開口放出と脂肪炎症及びインスリン抵抗性への関連:①WT及びMYOF KOの腹腔MφをTNF-αでアポトーシスを誘導した初代培養脂肪細胞と共培養し、Mφの泡沫化を評価し、培養上清の遊離脂肪酸や炎症性サイトカイン、リソソーム酵素の分泌を測定する。更にプロテアーゼ阻害薬を添加してリソソーム酵素の活性を抑制することで認められた差が減少するかを検討する。②WT及びMYOF KOの高脂肪食肥満モデルの内臓脂肪におけるMφの王冠様構造形成、フローサイトメトリーによるMφ浸潤、M1/M2極性状態の評価を行い、TUNEL染色による脂肪細胞のアポトーシスの評価やリソソーム酵素含量を評価する。更にクロドロン酸内包リポソーム投与よるMφの除去で、これらの差がWTとMYOF KO間で減少するかを検討し、MφにおけるMYOFの他者融解による脂肪炎症への寄与を考察する。 2)脂肪組織のMYOFによる脂肪分化及び肥満病態でのinsulin/IGF-1シグナル調節機能についての検討:MYOF KOの脂肪組織より分離した脂肪前駆細胞を用いてIGF-1シグナルがWTに比し、減弱するかを検討する。その機序について、late endosome/lysosomeのマーカーであるLAMP2とinsulin及びIGF-1レセプターの免疫染色でmergeする小胞が増加するか(recyclingされずに分解が増加するか)を観察し、膜分画におけるレセプターの蛋白発現も検討することによりMYOFの機能低下がrecyclingを抑制するかを検討する。 3)以上の結果から、MYOFのin vivoにおける更なる機能解析のため、脂肪組織またはマクロファージ特異的なコンディショナルノックアウトマウスの作成の着手を考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、細胞実験、動物実験共にこれまでの試薬の継続使用や他の研究財源の使用が可能であったため、予定よりも少額での実験が可能であった。 次年度では、前述の如く、遺伝子改変動物の作成の着手も検討しており、そのための研究費として使用を計画する必要があった。
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