研究課題/領域番号 |
18K08480
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
池田 康将 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60432754)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マクロファージ / 鉄 / 鉄保持タンパク / 炎症 |
研究実績の概要 |
本年度は、既に作成・準備済みであったマクロファージ特異的フェリチン欠損マウス(KO)と対照群の野生型マウス(WT)を用いて解析を行った。高脂肪食(HFD)を3ヶ月間与えて肥満・糖尿病マウスを作成した。 正常飼料を与えたマウスでは両群間に体重差を認めなかったが、HFD群では両者とも体重増加がみられたものの、WTマウスと比べてKOマウスでその程度は軽度であった。内臓白色脂肪組織の重量も同様であり、病理組織における脂肪細胞径肥大もKOマウスで軽度であった。摂餌量はWTマウス群、KOマウス群の差はみられなかった。糖負荷試験、インスリン負荷試験において、HFDを与えたWTマウスでは耐糖能・インスリン感受性の悪化がみられたが、KO群ではその程度は軽度であった。白色脂肪組織における炎症性サイトカイン(TNF-alpha, MCP-1, IL-1beta)の遺伝子発現は、NDマウス群と比較して、HFDを与えたWTマウスではそれらの上昇がみられたが、KOマウス群ではその程度は軽度であり、F4/80染色による脂肪組織へのマクロファージ浸潤評価においても同様にKOマウス群で抑制された。また脂肪組織における鉄量は、HFDを与えることで増加するが、WTマウスと比較して、KOマウスではその増加は抑制されていた。 以上より、高脂肪食による肥満・糖尿病の発症が、マクロファージ特異的フェリチン欠損によって抑制されることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していたマクロファージ特異的フェリチン欠損マウスを用いた解析によって、肥満・糖尿病におけるマクロファージ鉄の役割を明らかにすることができた。肥満脂肪組織における炎症にはマクロファージ内鉄が関与することを示す知見に加えて、フェリチン制御はマクロファージ活性化抑制と細胞内鉄量調整につながることが示唆され、本研究の仮説を支持するものであった。
|
今後の研究の推進方策 |
マクロファージ特異的フェリチン欠損による肥満・糖尿病の抑制効果が、マクロファージの鉄量減少/フェリチン欠損によるものかについて、マクロファージの初代培養もしくはセルライン化されたマクロファージへのsiRNA導入を行い、確認する。またマクロファージ特異的フェリチン欠損マウスを用いた肥満・糖尿病の抑制効果について、さらに詳細にメカニズムを解析する。脂肪組織もしくは単離マクロファージを用いて、フェリチン欠損による遺伝子変動について解析して、フェリチン制御に関わる新規遺伝子の同定も予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度試薬購入に使用する予定である。
|