研究課題/領域番号 |
18K08485
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
唐澤 直義 自治医科大学, 医学部, 助教 (60631893)
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研究分担者 |
高橋 将文 自治医科大学, 医学部, 教授 (40296108)
木村 博昭 自治医科大学, 医学部, 講師 (70593622) [辞退]
渡邊 幸子 自治医科大学, 医学部, 助教 (80770619)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コレステロール結晶 / 飽和脂肪酸 / 好中球 / 動脈硬化 / インターロイキン |
研究実績の概要 |
動脈硬化病変にコレステロール結晶が沈着することは,以前よりよく知られている.しかしながら,病変に沈着した結晶が病態の進展に及ぼす影響については長い間未解明のまま残されていた.近年,コレステロール結晶がマクロファージなどの自然免疫細胞に発現する分子複合体であるNLRP3インフラマソームを活性化することで,動脈硬化病変における炎症の惹起に関与することが明らかになった.一方,コレステロールや脂肪酸などの脂質結晶は急性炎症応答においては,好中球浸潤を誘導するが,脂質結晶により誘導される好中球が,動脈硬化などの慢性炎症の病態において果たす役割については明らかでない点が多い.本研究課題は脂質結晶の沈着を伴う慢性炎症病態の進展において,好中球が果たす役割を明らかにすることを目的としている.本年度は脂質結晶により誘導される好中球浸潤を抑制するための標的分子を明らかにするため,急性炎症モデルを用いた検討を行った.コレステロール結晶をマウスの腹腔内に投与するとLy6G陽性の好中球の浸潤が認められる.この応答の責任分子について炎症関連遺伝子の欠損マウスを用いて探索を行った.しかしながら,NLRP3インフラマソームの構成分子であるNLRP3の欠損下では,この応答は抑制されなかった.さらに,NLRP3インフラマソーム依存的に産生される炎症性サイトカインであるIL-1βの欠損によっても好中球浸潤は抑制されなかった.一方,同じIL-1ファミリーに属する炎症性サイトカインであるIL-1αの欠損下では好中球浸潤は完全に抑制された.IL-1βとIL-1αは同様にIL-1受容体を活性化することが知られているが,本検討において,コレステロール結晶により誘導される好中球浸潤においてはIL-1αが主要な役割を担うことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂質結晶を伴う炎症における好中球への介入標的として,急性炎症モデルの解析から,炎症性サイトカインIL-1αの重要性について見出した.また,IL-1シグナルへの介入方法として,IL-1α,βの欠損マウスだけでなく,IL-1受容体アンタゴニストを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを樹立しており,慢性炎症病態モデルにおけるIL-1αを介した好中球浸潤の果たす役割について,解析する準備が整っている.
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今後の研究の推進方策 |
本課題の研究目的は脂質結晶の沈着を伴う慢性炎症病態の進展において好中球が果たす役割を明らかにすることであるが,前年度の検討結果を受け,炎症性サイトカインIL-1α,βそれぞれが動脈硬化の病変における好中球浸潤にどのような役割を果たしているかについて明らかにする.コレステロール結晶の沈着を伴う慢性炎症病態のモデルとして動脈硬化モデルマウスであるウエスタンダイエット負荷したLdlr欠損マウスを用いる.IL-1α,βそれぞれの欠損マウス由来の骨髄を移植することで,動脈硬化病変への好中球浸潤と動脈硬化形成に及ぼす影響を明らかにする.また,IL-1受容体アンタゴニストを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを投与することで,この応答に対してIL-1rシグナルの阻害が与える影響についても検証する.一方,最近,結晶が好中球のNeutrophil extracellular traps形成を伴う細胞死であるNETosisを誘発することが報告されていることから,IL-1シグナルの阻害が動脈硬化病変でのNETosisに与える影響についても明らかにする.
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