研究課題/領域番号 |
18K08486
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
清水 裕晶 獨協医科大学, 医学部, 助教 (60594398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | SMRT / レチノイド / 肥満 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
実験で用いるトランスジェニックマウスは、米国Harvard大(現在はCornell大に移籍)の共同研究者:Anthony N. Hollenberg教授から分与されて繁殖を開始した。本研究の目的である、肥満化現象についても正常カロリー食での通常飼育により再現性を確認した。今後の実験に用いる組織サンプルを採取しており、研究目的である肥満制御メカニズムの解明に向け生体試料と質量分析器を用いたレチノイド定量、プロテオミクスによるレチノイド代謝蛋白酵素の網羅的分析を進めている。 また、SMRT遺伝子による組織特異的作用の解明のため、培養細胞を用いた遺伝子ノックアウト細胞を作成しており、CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集によるSMRT遺伝子欠失細胞株を複数樹立することに成功した。個別臓器モデルとしてSMRT特異的な転写制御機構、標的遺伝子の同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR-Cas9を用い、マウス肝細胞、筋細胞、下垂体細胞由来の細胞についてSMRT欠失株を樹立できており、肝細胞におけるAldh1a1など主要なレチノイド代謝酵素遺伝子の発現増加(脱抑制)を確認した。これはトランスジェニックマウスにも認めた遺伝子変化である。筋細胞においてもSMRT結合パートナーであるPPAR deltaの発現亢進など肥満・脂質代謝に関わる遺伝子が in vitroでも多数SMRTによって転写制御を受けることがわかった。 本法はSMRTの組織特異的機能解明に有効な実験系を確立する為に有効な手法である。したがって、その他肥満に関わる生体臓器(膵臓ベータ細胞や視床下部細胞など)由来の培養細胞についても、本法を応用展開可能であると考えており既に着手している。 米国Harvard大で行った研究を補う目的で追加実験をおこない、その際、本科研費の一部を使用した。その結果も加えて、米学術誌に投稿し、現在査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓はレチノイド代謝の主要な標的臓器である。SMRTによる肝臓特異的作用の解明のため、また、全身SMRT KOマウス体内の臓器間クロストークによるレチノイド代謝制御への影響を除外するため、生体由来の肝細胞を用いたex vivoによる解析を行う事が必要である。初代培養や肝臓オルガノイドの作成など、生理的な条件に近い形でex vivoによるSMRT欠失肝細胞を性体外に再現し、レチノイド代謝におけるSMRT特異的な遺伝子転写制御メカニズムの解明に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は今年度に引き続き、抗体など、蛋白解析に必要な試薬類のための費用が必要であり、次年度はさらに、RNAシーケンス、LC-MS/MSなど、組織中のRNAおよび蛋白の網羅的解析に必要な試薬の購入を計画している。
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