細胞レベルの研究ではグルカゴン分泌細胞株InR1G9細胞を用いグルカゴン分泌を検討した。同細胞にPkcδの阻害薬を投与したところグルカゴン分泌が低下した。次に同細胞株でsiRNAを用いPkcδをノックダウン(KD)したところ、グルカゴン分泌は低下した。またInR1G9細胞にグルカゴン分泌を促進するとされるアルギニンやIBMXを投与するとグルカゴン分泌が亢進した。アルギニン投与において同細胞株でPKCδの発現やリン酸化を検討したところPkcδのリン酸化(Thr505)が亢進していた。さらにアルギニン応答性グルカゴン分泌はPkcδのKDにて抑制された。 動物レベルの研究ではGlucagonCreマウスとPkcδfloxマウスを交配し膵α細胞特異的Pkcδノックアウトマウス(αPkcδKO)を作製した。樹立確認はDNAレベルと蛋白レベルで行った。PkcδfloxマウスではPkcδのKOに伴い約500bpのdeletion bandが出現するようプライマーを設定し、αPkcδKOマウスの膵島より同bandを確認した。またαPkcδKOマウスにR26-tdTomatoマウスを交配し膵α細胞におけるCreの発現を検討した。Creは膵α細胞の96%に発現していた。そして、樹立したαPkcδKOマウスの表現型を検討した。αPkcδKOマウスでは空腹時や随時血糖値、空腹時や随時グルカゴン値はControlマウスに比し有意な変化はなかった。しかし、アルギニン応答性グルカゴン分泌はαPkcδKOマウスにて有意に低下していた。またαPkcδKOマウスより膵島を単離しグルカゴン分泌を検討したところ、αPkcδKOマウスではControlに比較しアルギニン応答性グルカゴン分泌は低下を認めた。 以上より、細胞レベルと生体レベルでアルギニン応答性グルカゴン分泌にPkcδの関与が示唆された。
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