共通の前駆体であるプログルカゴンは、膵α細胞において、PCSK2によりプロセッシングを受けグルカゴンとなる。一方、腸管内分泌細胞(L細胞)でPCSK1によりプロセッシングを受け、GLP-1やGLP-2、グリセンチン、オキシントモジュリンになる。最近、代謝ストレス状態や運動などで、α細胞からのGLP-1産生が報告され、一方、腸管からもグルカゴンが産生される可能性が示唆されている。本研究では、同じプログルカゴン遺伝子を発現するα細胞とL細胞の分化誘導・機能発現を決定づける様々の因子は明らかにした。 プログルカゴン遺伝子プロモーター下にYFPを発現するmGluVenus マウスを用いた。各単一細胞は、フローサイトメトリーを用いて、YFP陽性細胞を分取し、それぞれ単離α細胞、単離L細胞とした。遺伝子発現はRq-PCRや、RNA-seqにて網羅的に探索し、遺伝子発現の比較を行った。代謝ストレス状態での遺伝子発現の変化を確認するために、60%高脂肪食下で4週間飼育後、同様に検討した。 普通食マウスでは、L細胞では転写因子としてcdx1、cdx2、α細胞ではmafB、nkx6-1が、特異的に発現していた。pax6、arxは双方で遺伝子発現を認め、発現差はなかった。ホルモンとしては、L細胞はgip、ghrl、cckの、α細胞は ppyの遺伝子が、特異的に発現していた。また、pcsk1はL細胞で、pcsk2、pcsk1nはα細胞で高発現を確認した。高脂肪食マウスでは、普通食マウスと比較し、転写因子としてarxの発現増加を双方で認め、cdx1、cdx2、pax4はL細胞でのみ発現量が増加した。ホルモンとしてはL細胞でsstの発現量は低下していた。pyy、ppyは、α細胞とL細胞で発現量がともに増加を認めた。一方、高脂肪食摂食下のマウスのα細胞で、pcsk1の発現量の低下を認めた。
|