研究課題/領域番号 |
18K08499
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
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研究分担者 |
佐藤 達也 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00568222)
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
山形 聡 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (50769940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マウス / ストレス / 糖質コルチコイド / 不安情動 / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
最近我々は,PVH の CRF ニューロンが正中隆起以外にも複数の脳内領域に直接投射し,しかも, CRF ニューロンの細胞体は投射領域に応じてPVH 内で subnuclei(亜核)を形成していることを発見した.今年度は,PVHから脳内に投射するCRFニューロン亜核が複数の脳内領域に投射するか,それとも,PVHの亜核は投射野に対しそれぞれ1対1の投射を行うかを検討した.そのため,各投射野ごとにCre依存的GFP発現逆行性HiRetウイルスベクターを注入し,PVHレベルでこれらの形態学的分布を検討した.その結果,PVHの亜核と投射野には概ね対応関係が存在することが明らかとなった.これが1対1の対応関係かどうかに関してはさらに詳細な検討が必要である.さらに,正中隆起に投射し神経内分泌機能に関与するCRFニューロンが脳内にも投射するか否かを,正中隆起の神経終末から取り込まれ逆行性に輸送されるFluorogoldをHiRet投与後に末梢投与し,PVHレベルでGFPとFluorogoldの両者を二重免疫蛍光法を用いて検出した.その結果,正中隆起に投射する神経内分泌ニューロンの大部分は脳内投射ニューロンとは異なる亜核を形成することが明らかにされた. 次に,CRFの脳内機能を解明するため,世界で初めてCRF受容体1-CreノックインマウスおよびCRF受容体2-Creノックインマウスの作製に成功した.次年度以降はこれらのマウスを用いてCRFの異なる受容体を介する脳内作用を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はウイルスベクター注入における最適条件などの検討に予想外の時間を費やしたため,当初予定していた実験,たとえば,二つの一次投射野にそれぞれCre依存的緑色蛍光タンパク質と赤色蛍光タンパク質発現HiRetベクター注入実験まで至らなかった.現在検討中であり,次度中には完了する見込みである.同様に,一次投射領域ごとにチャネルロドプシン発現ウイルスベクターを注入し,それぞれの機能を検討する実験にも着手した段階であり,次年度以降に結果が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,二つの一次投射野にそれぞれCre依存的緑色蛍光タンパク質と赤色蛍光タンパク質発現HiRetベクター注入実験を行う.さらに,一次投射領域ごとにチャネルロドプシン発現ウイルスベクターを注入し,それぞれの機能を検討する実験を行う.特に,CRFニューロンの機能として注目される摂食行動,自律神経系,不安情動との関連性について検討を行う予定である.予備実験段階ではあるが,PVHのCRFニューロンが血圧調節に関与するという証拠が得られているので,さらにそのメカニズムを検討する予定である.また,前年度に開発されたCRF受容体1-CreマウスおよびCRF受容体2-CreマウスとGFPレポーターマウスを交配し脳内CRF受容体1発現ニューロンとCRF受容体2発現ニューロンの分布を検討する.これらは,すでにリガンド結合実験やin situ hybridization法で報告があるが,結果に不一致が認められ,本研究によって従来の研究の方法論上の問題を克服できるものと考えている.また,これらの脳内の特異的領域ににCre依存的チャネルロドプシン2またはCre依存的陰イオン性チャネルロドプシン2発現ウイルスベクターを注入し,それぞれの受容体発現ニューロン選択的刺激または抑制によって惹起される摂食,自律神経系,不安情動の変動を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に計画していた実験の一部が遂行できず,次年度に行うことになったため.次年度に繰り越す20,120円に関しては,蛍光免疫染色法に用いる試薬の購入に充当する予定である.
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