研究課題
健康寿命延伸および医療費削減の目的において、高血圧症およびそれに伴う臓器障害の予防は喫緊の課題である。原発性アルドステロン症(PA)は、二次性高血圧症のうち約10%と最たる原因であり、上記理由から早期診断・早期治療が求められる。しかし、複数回の負荷試験、副腎静脈サンプリングを用いた現行の診断手法は、月単位での時間を要し、また、一連のプロセスは専門施設でのみ実施可能であることから、適切な診療を受けることのできないアンメットニーズが存在する。我々は、PAにおいて極めて産生が亢進する18-オキソコルチゾール(18oxoF)に着目し、18oxoFのPA存在診断、そして、局在診断の新規バイオマーカーとしての末梢血18oxoF測定の臨床応用を目的に、本研究を進めている。平成30年度では、PAのうち、手術治療の適応となるアルドステロン産生腺腫(APA)症例において、18oxoF産生亢進機序に関する病理組織学的解析を行った。結果、APA 48症例の解析を行った時点で、末梢血18oxoF濃度はAPAの腫瘍径およびアルドステロン合成酵素を中心とするステロイド合成酵素発現、そして、正常副腎では観察されないアルドステロン合成酵素とコルチゾール合成酵素である11β-hydroxylaseの共発現細胞数と統計学的有意差をもって正相関しており、これらの特徴的腫瘍内環境が18oxoF産生亢進の原因であることが示唆された。さらに、本邦で報告が最多であるKCNJ5体細胞変異がdriverであることが示され、PA診療での末梢血18oxoF測定の臨床応用の可能性が再確認できた。現在は、KCNJ5以外の体細胞性変異を有する症例を中心とした追加検討、薬物治療の対象となる特発性アルドステロン症症例との比較検討を進めている。本研究により、非侵襲的かつ普遍的に実施可能な末梢血18oxoF測定の臨床応用が進むものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
本研究申請時点で予定していた、アルドステロン産生腺腫におけるステロイド合成酵素発現およびCYP11B1/CYP11B2共発現細胞の解析を実施した。予定した症例数より少数での解析であったが、約半数の症例検討で一定の結果を得ており、本研究は概ね予定通り進展していると判断している。
平成30年度の検討により、アルドステロン産生腺腫内の体細胞性変異が重要であることが確認されたため、今後は本邦で比較的少数とされる種類の体細胞性変異を有するアルドステロン産生腺腫症例の選定および解析、そして、特発性アルドステロン症症例との比較検討を進める予定である。
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Hypertension
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10.1161/HYPERTENSIONAHA.118.12064.