研究課題
原発性アルドステロン症(PA)は二次性高血圧症の原因の中で最も頻度が高く、その高い心血管疾患合併率から、早期発見、適切な治療介入が肝要とされる。しかしながら、複雑かつ実施可能施設が限定される現行の診断手法は、診断・病型確定までに時に数ヶ月単位での時間を要し、適切な診療を受けることのできないアンメットニーズが一定の割合で存在する。我々は現在まで、PAにおいて極めて産生が亢進する18-オキソコルチゾール(18oxoF)に着目し、末梢血18oxoF濃度によるPA病型診断簡略化の可能性について研究を行ってきた。これまでの研究結果から、末梢血18oxoF濃度はPA病型による差異の他、アルドステロン産生腺腫(APA)内でも体細胞性変異、特にKCNJ5遺伝子変異の有無によって末梢血18oxoF濃度が大きく異る可能性が示唆されている。令和元年度では、当グループでこれまで経験したAPA 100症例超の体細胞性変異について、ミシガン大学の協力を得てSanger sequenceおよび次世代シークエンサーによる網羅的な解析を行った。結果、全体の約7割でKCNJ5遺伝子の変異が確認され、約2割においてCACNA、ATPaseの遺伝子変異を認めた。以前の研究結果から、末梢血18oxoF濃度の病型診断能がKCNJ5変異の頻度に依存することが示唆されており、末梢血18oxoF濃度が、欧米と比較してKCNJ5変異頻度の高い本邦ならではの新病型診断マーカーと成り得ると考えられた。現在、体細胞性変異毎の末梢血18oxoF濃度差異について質量分析計による測定、統計解析を進めており、末梢血18oxoF濃度の最適な測定条件の設定、特発性アルドステロン症症例との比較と合わせて、研究を継続している。本課題が、末梢血18oxoF濃度測定の臨床応用を大きく後押し、実臨床へ還元されることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初予定したアルドステロン産生腺腫の自験例における体細胞性変異評価を年度内に終了することができ、また、令和2年度にかけて行う病型、体細胞性変異ごとの末梢血18oxoF濃度測定にも着手することができた。現時点で、予定した実験の期限内の完遂が可能な位置におり、本研究は概ね予定通り進展していると判断している。
過去2年間の研究により、研究対象症例の選定および体細胞性変異などの背景因子の評価も終了したため、次年度は末梢血18oxoF濃度測定を中心に研究を進展させ、臨床因子との比較検討および末梢血18oxoF濃度の最適な測定状況の検討を行う。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 10件、 招待講演 10件)
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