研究課題
心筋症の典型的経過は、特にその代表的病態である肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy)にあっては初期には心筋肥大を主徴とするが、中年以降に心筋線維化・収縮不全・心筋 の菲薄化が進行し心不全に至るものである。心筋症についてはサルコメア蛋白の変異・発現異常を中心に検討が進んできたが、病態解明は遠い状況であった。 我々は局所マクロファージであるM2マクロファージのマーカーであるCD206を遺伝的に欠損したマウスが心筋症のモデルとなることを 見出した。従来マクロファージと心機能・心不全は心筋炎を含む炎症や損傷修復との関連での議論しかなく想定外ではあったが、MRI、心エコー、組織での心肥 大、BNPおよび心筋線維化関連遺伝子の発現上昇が確認された。 さらにCD206の遺伝的欠損によりF4/80は上昇、IL-10も上昇、一方でM2マクロファージの数は減ることが見出され、心筋にもCD206は発現しているが、CD206のKOにより、心筋の組織マクロファージに影響が出ていることが確認された。CD206KOでの高脂肪食摂取と正常食摂取の比較では、むしろ正常食のほうが心筋肥大が顕著に現れた。加えてCD206DTRの結果より、CD206陽性細胞を後天的に除去することで、心重量は有意差は付かないものの増加傾向、collagen関連遺伝子の発現亢進は確認された。上記よりCD206の欠損や減少が心筋繊維化を介して心筋肥大に繋がることが確認された。
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