研究課題
2型糖尿病患者における骨粗鬆症及び骨折のリスクは近年認識されてきているが、詳しい原因や機序については明らかになっていない。原因の一つとしてあげられるのが、骨代謝に対するインスリン作用の変化(インスリン抵抗性)であるが、このメカニズムも完全には解明されていない。本研究の目的は、2型糖尿病時に肝臓から分泌されるヘパトカイン、セレノプロテインP(SeP)タンパク質が、骨芽細胞のインスリン/IGF1作用を低下させ、骨代謝を抑制しているという仮説を証明し、まだ確立されていない生活習慣病関連骨粗鬆症治療法開発の基盤を構築することである。具体的には高脂肪高ショ糖食を4か月与えたマウスや、2年齢以上の高齢マウスに起こる2型糖尿病に関連した骨粗鬆症や骨折が、全身SeP ノックアウト(selenop KO)マウスや肝臓特異的selenop KOマウス、および骨芽細胞特異的なSeP受容体KOマウスでどのように改善されるのかを検証し、シグナル伝達経路も明らかにする。現在までの研究で、初代培養骨芽細胞及びselenop KOマウス、肝臓特異的selenop KOマウスを用いて、シグナル伝達経路を調べた。加えて、骨芽細胞特異的Lrp1 KOマウスを用いて、肝臓から分泌されたSePタンパク質が骨芽細胞のLrp1受容体を介して細胞内に入り、自らの抗酸化作用によってROSの発生を低下させることで、IGF1シグナルを抑制していることを明らかにした。また、2年齢のselenop KOマウスについても調べ、これらのマウスでもインスリン感受性や骨粗鬆症が野生型と比べて改善していることが分かった。さらに、ヒト健診データおよび、血液サンプルについても調べ、血中SeP濃度と骨密度、身長、体重が負に相関することが明らかになった。
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The American Journal of Pathology
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