研究課題/領域番号 |
18K08510
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
豊田 太郎 京都大学, iPS細胞研究所, 講師 (60593530)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NKX6.1 / PDX1 / 膵芽 / 膵臓 / iPS細胞 / ES細胞 / 発生 |
研究実績の概要 |
移植医療や創薬への応用に向けて、ヒト幹細胞(ヒトES/iPS細胞)から膵細胞を作製する研究が精力的に進められている。発生学の知見に基づき、様々な膵細胞を分化誘導することが可能となってきたが、不安定な作製効率や、目的外細胞の混入など解決すべき課題が多くある。その原因の一つとして、膵臓の基となる膵芽細胞への分化機序の全貌が不明であることが挙げられる。本研究では、膵芽細胞に特異的なマーカー遺伝子NKX6.1を指標として、ヒトiPS細胞から膵芽細胞への分化を調節する分子を網羅的に探索・同定し、その役割を解明することを目的としている。 まず、膵芽細胞への分化に関わる分子を同定するために、siRNA導入による網羅的な遺伝子発現抑制スクリーニング系の構築を試みた。蛍光色素が付加されたオリゴを用いて導入効率の改良・安定化した後、ポジティブコントロール・ネガティブコントロールを用いて評価系の安定性、検出感度を改良した。続いて、この系を用いて719種類の遺伝子を評価し、29種類の候補遺伝子を得た。現在、同一オリゴによる二度目の試行にて再現性良くNKX6.1+細胞への分化を抑制あるいは促進する候補遺伝子を確認している。また、網羅的解析の加速や、候補遺伝子の精査に向けて、NKX6.1の発現と相関して蛍光色素を発現するレポーターヒトiPS細胞株を樹立した。改変した遺伝子が正確に導入された細胞株を選別し、分化誘導することでNKX6.1の発現と相関して蛍光色素が発現する細胞株であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、膵芽細胞(NKX6.1+)への分化機序解明に関して、新規経路を同定するためのsiRNAスクリーニング系を構築し、候補となる遺伝子をいくつか得た。また、解析に有用なレポーター細胞株を樹立した。これらによって分化機序の解明が進展すると考えられるため、目標達成に向けて順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
候補遺伝子を絞り込むため、1次スクリーニングと同一のオリゴによる二度目の試行にて再現性良くNKX6.1+細胞への分化を抑制あるいは促進する標的遺伝子の候補を得る。続いて、これら候補遺伝子に対して、既報や遺伝子の情報(上流・下流分子との相関性など)から経路を推定し、優先順位を決定する。そして、優先順位の高いものから、同一遺伝子に対する別の配列を持ったオリゴを用いた発現抑制によって、その遺伝子の分化過程への関与を再検証し、以後の解析候補遺伝子とする。
分化過程における候補遺伝子の役割を推定するため、様々な分化誘導因子、刺激タイミングなどに対する候補遺伝子の発現・活性への影響を検討する。また、平面あるいは細胞塊の浮遊培養など、異なる培養フォーマットを用いて、いずれの分化培養系においても関与することを示す。続いて、推定した役割を検証するため、任意のタイミングで目的遺伝子の発現量を調節できるヒトiPS細胞株を樹立する。そして、この細胞株から分化誘導した膵系譜の細胞に対して、標的分子のシグナルを直接活性化し(野生型あるいは活性型の発過剰現)、膵芽細胞への分化が促進あるいは阻害されるか検討する。細胞株樹立には、遺伝子が正確に導入され、遺伝子導入後も分化誘導効率が正常かつ、標的分子候補の活性調節可能な細胞株を選別する。候補分子の活性調節にて作製されるNKX6.1+細胞が膵芽細胞であることをin vitroやin vivoにて検証する。
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