研究課題/領域番号 |
18K08511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河盛 段 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50622362)
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研究分担者 |
松岡 孝昭 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (10379258)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルカゴン / 糖尿病 / インクレチン / DPP-4 / ストレス応答 |
研究実績の概要 |
本課題では、糖尿病病態の解明と新たな治療法の開発を目指し、グルカゴン分泌異常を「プログルカゴン由来ホルモンの分泌バランス変化とα細胞の機能的変容」ととらえた新しい概念仮説を検証すべく研究を遂行している。 1.グルカゴン分泌細胞株におけるホルモン分泌パターン変容の解析 グルカゴン分泌異常発生時のα細胞におけるプログルカゴン由来ペプチドの分泌バランス変化、そしてその背景メカニズムを検討すべく、InR1G細胞に対し高グルコースをはじめとした代謝的負荷を行い、グルカゴン・GLP-1の分泌変化を評価した。InR1Gに対する12時間の高グルコース負荷はインスリンシグナル障害を介してグルカゴン分泌過剰を誘導したが、一方でこのときのプログルカゴン遺伝子発現は有意変化を呈さなかった。同条件下にてGLP-1はグルコース応答性に分泌され、そのパターンはグルカゴンと同様であった。興味深いことにこれらグルカゴンとGLP-1分泌はDPP-4阻害薬処理にて大きく増加し、InR1GにおけるDPP-4の病態的意義が示唆された。一方でグルカゴンと機能的連関を有するアミノ酸の負荷ではグルカゴン分泌への影響は見られなかった。今後は負荷によるプログルカゴンプロセシングの変化、DPP-4の発現変化などを解析し、α細胞の機能的タイピングを試みるとともに、その背景機序を探索する。 2.糖尿病及びα細胞機能障害モデルマウス単離膵島におけるα細胞由来ホルモン分泌パターンの解析 上記1.にて示唆されるα細胞の機能的変容を生体内で検証すべく、モデルマウスの病態生理学的解析を予定している。現在、プログルカゴンCreマウスとインスリン受容体floxマウスを交配したα細胞特異的インスリン受容体欠損(αIRKO)マウス系統を作製、維持・拡大している。十分数の個体数確保後に単離膵島を用いて生体由来α細胞における機能的多様性の可能性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞株を用いた分子生物学的実験においては、予定した研究計画通りに実験進行を行い、グルカゴン分泌に加え、GLP-1分泌についても評価を進めることができた。そのような中、実験結果の一部よりα細胞におけるDPP-4の病態的意義を示唆する結果が予定外に得られた。引き続き研究計画に則った実験を随時進めるとともに、得られた新知見の意義を検討するべく、研究計画を追加・変更して進めている。 動物を用いた実験においては、科学的に妥当性を検証できる個体数の確保が必要であり、現在は作製した系統の維持とともに個体数の拡大を行っている。一時、繁殖における問題があり、個体数の十分な確保ができていなかったが、現在は再び繁殖による個体数の増加が可能となり、実験に使用可能な個体が確保され次第、順次実験を進行する予定である。 従って、現在までは当初の計画通りの実験・研究進行が得られ、今後の研究の進展に向けた基礎的なデータを着実に蓄積しているほか、予想外の結果による研究の展開も行っていることより、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株を用いた分子生物学的実験においては、当初の実験プロトコールにより多くの実験データが得られた。引き続き、グルカゴンとGLP-1分泌の変化を捉えるとともに、その背景メカニズムの探索と同定を目指す。また、α細胞におけるDPP-4の病態的意義を明らかとすべく、その発現量や酵素活性などの機能的評価を追加し、検討を進めていく予定である。当初の予定、仮定とは若干異なるが、学術的意味は大きいと考えられ、こちらにも注力して行く。一方で動物実験においては、遺伝子改変マウスの系統維持と個体数の確保を優先するが、順次得られた試料をもって、細胞実験で得られた知見の実証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度に予定していた動物を用いた実験において一時、繁殖における問題があり、個体数の十分な確保ができず、先行試験などを延期せざるをえなかった。そのため、当年度に予定していた実験に使用すべき一部を、十分な個体数が得られると想定される次年度使用額として計上している。なお、現在は再び繁殖による個体数の増加が可能となり、実験に使用可能な個体が確保され次第、順次実験を進行する予定である。
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