研究課題/領域番号 |
18K08514
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井口 元三 神戸大学, 保健管理センター, 准教授 (60346260)
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研究分担者 |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己免疫性下垂体疾患 / 抗PIT-1下垂体炎 / 腫瘍随伴症候群 |
研究実績の概要 |
1)診断マーカーおよび治療ターゲットの同定:現在、下垂体機能低下症の患者(ACTH単独欠損症(46例)およびICI関連下垂体炎症例(20例))の血清を用いた免疫染色でラット下垂体のACTH産生細胞を特異的に認識する自己抗体の存在を複数症例において確認した。抗原となる蛋白の候補を絞り込んでおり、ウエスタンブロッティングおよびラット正常下垂体組織を用いた免疫染色で確認を行った。 2)疾患発症メカニズムの解析:既に抗PIT-1抗体症候群(抗PIT-1下垂体炎)患者の胸腺腫瘍と正常者および他の胸腺腫患者からのデータと比較し、胸腺腫瘍患者に共通する点がないかについて、呼吸器外科から供与いただく胸腺摘出サンプルを用いて候補遺伝子の異所性発現や自己抗体について検討している。また、胸腺腫を伴わない悪性腫瘍に伴って発症したと考えられる抗PIT-1下垂体炎2例に関して検討を進めている。 3)細胞障害性T細胞の機能解析:すでに稼働している疾患特異的iPS細胞の作製法を用いて、実際に細胞障害性T細胞(CTL)が関与しているかを検討した。① 患者細胞から作成した疾患特異的iPS細胞を用いて下垂体分化モデルを作成し、HLA class I上にepitopeが結合して複合体を形成し下垂体細胞表面に提示されるかを、Proximity Ligation アッセイ(PLA)を用いて解析した。② さらに、下垂体分化モデルに患者血中から単離した細胞障害性T細胞(CTL)を作用させることにより、ホルモン分泌細胞に対してCTLが自己免疫機序を生じさせるメカニズムをin vitroで検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)診断マーカーおよび治療ターゲットの同定:下垂体機能低下症の患者数は順調に増加しており、ICI関連下垂体炎症例は前回18例から20例となっている。これらの患者血清を用いた免疫染色でラット下垂体のACTH産生細胞を認識する自己抗体の存在を確認した。抗原となる蛋白の候補を絞り込んでおり、ウエスタンブロッティングやラット正常下垂体組織を用いた免疫染色で確認を進めている。 2)疾患発症メカニズムの解析:胸腺腫瘍と自己免疫性下垂体疾患の関連に関して検討し、既に抗PIT-1 抗体症候群(抗PIT-1下垂体炎)患者の胸腺腫瘍におけるエクソーム解析およびメチローム解析を行っており、正常者および他の胸腺腫患者からのデータと比較することで候補遺伝子を選定している。今後、胸腺腫瘍患者に共通する点がないかについて、呼吸器外科から供与いただく胸腺摘出サンプルを用いて候補遺伝子の異所性発現や自己抗体について上記と同様の手法を用いて検討する。 3)細胞障害性T細胞の機能解析:患者から作成した疾患特異的iPS細胞を用いて下垂体分化モデルを作成は終了し、HLA class I上にepitopeが結合して複合体を形成し下垂体細胞表面に提示されるかを、PLAを用いて解析した。さらに、患者血中にある細胞障害性T細胞(CTL)から抗原タンパク(PIT-1)に対して特異的反応性を持つグループを単離し、iPS細胞作成を経ることによりPIT-1特異的反応性を持つCTLを純化することに成功した。下垂体細胞に対してCTLが自己免疫機序を生じさせるメカニズムをin vitroで検討をしている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り下記の研究を進めていく予定である。 1)下垂体機能低下症の患者血清からIgG を抽出し、正常組織ならびに細胞株由来のタンパクと患者IgG で免疫沈降を行い、抗原の可能性がある分子の同定を継続する。加えて、免疫染色を行い抗原の発現の有無、抗体の存在につき確認を行い、診断マーカーおよび治療ターゲットとして有用であるかと検討する。 2)胸腺腫瘍患者に共通する点がないかについて、呼吸器外科から供与いただく胸腺摘出サンプルを用いて候補遺伝子の異所性発現や自己抗体について上記と同様の手法を用いて検討する。 3)下垂体分化モデルに患者血中から単離した細胞障害性T細胞(CTL)を作用させることにより、ホルモン分泌細胞に対してCTLが自己免疫機序を生じさせるメカニズムをin vitroで検討する。
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