本研究では、①骨芽細胞、骨細胞のAMP-activated protein kinase (AMPK)の骨代謝における重要性、②骨芽細胞AMPKの全身の糖代謝における重要性を検討することを目的とした。 ①我々は骨芽細胞特異的AMPK欠損マウスでは、骨形成低下と骨吸収増加により骨量が減少することを報告した(Endocrinology 2018)。今回は骨芽細胞AMPKがadultマウスにおいても骨量維持に重要か否かを検討した。具体的に、生後3週まではdoxycyclineを用いてCre発現を抑制し、doxycyclineをoffした後6カ月後、18カ月後に骨組織の解析を行った。マイクロCTを用いた解析により、6ヵ月では骨量に有意な変化は認めなかったが、18カ月後には有意な海綿骨量と皮質骨幅の減少を認めた。骨代謝マーカーでは、骨形成マーカーである血中オステオカルシンの有意な低下を認めたことから、骨形成低下による骨量減少が示唆された。また、未分化間葉系細胞におけるグルコース取り込みの脂肪細胞、骨芽細胞分化への影響にAMPKが関与しているか否かの検討を行った。グルコース取り込み阻害はAMPK活性を促進し、脂肪細胞分化を促進したが、AMPK阻害薬araAはこれらの作用に影響しなかった。したがって、グルコース取り込み阻害による脂肪細胞分化促進作用にAMPKは関与しないと考えられた。 ②骨芽細胞特異的AMPK欠損マウスにおける耐糖能を検討した。体重や脂肪量には有意な差はなかったが、グルコース負荷試験により、コントロールと比較して有意な血糖上昇が認められた。さらに、インスリン負荷試験により血糖低下が認められなかったことから、インスリン抵抗性による耐糖能異常が存在することが示唆された。脂肪細胞におけるアディポネクチン、レプチン、レジスチンなどのアディポカインの発現には有意な差は認められなかった。
|