研究課題/領域番号 |
18K08516
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
奥屋 茂 山口大学, 大学教育機構, 教授 (20214083)
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研究分担者 |
田部 勝也 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (00397994)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルカゴン / 膵α細胞 / 褐色脂肪細胞 / 低炭水化物 / 高蛋白 |
研究実績の概要 |
栄養変化に対して、膵内分泌細胞がどのような細胞挙動を示すかは不明である。低炭水化物/高蛋白食(LC/HP食)長期間摂餌マウス(C57/BL6j)では、膵全体の膵島でα細の著明な増加と脂質エネルギー利用が亢進することがわかっている。 本研究では、マウス膵α細胞機能制御におけるLC/HP食の急性効果を解析した。摂餌開始2~10日後において、対照群に比し、血糖値は有意差を認めなかったが、開始2日後に最も顕著となる肝グリコーゲン含量低下に続き、血中グルカゴン濃度増加を認め、膵α細胞量は約2倍に増加した。この時、膵島内α細胞の増加に加え、膵島近傍の膵管周囲に多数のグルカゴン陽性細胞が数珠状に出現しており、膵管近傍細胞からα細胞が分化新生したものと推測された。この様なα細胞新生像には局在が見られ、抗Tyrosine hydroxylase抗体で確認される交感神経の分布と一致した。6-hydroxydopamineによる化学的除交感神経を行ったマウスでは、LC/HP食負荷によるα細胞新生・増殖が認められず、α細胞量増加は抑制された。一方、β細胞に対する系譜解析ではβ細胞からα細胞への分化転換は観察されず、β細胞増殖能および細胞量にも変化は認められなかった。以上の結果から、栄養変化に対する急性応答機構として交感神経系を介した膵α細胞量制御が示唆される。すなわち、代謝臓器を起点とする神経ネットワークの存在が想定され、肝グリコーゲン量変化との関係性に着目し解析を進めている。一方、LC/HP食を長期間摂餌させたマウスでは、褐色脂肪組織において脂肪分解およびβ酸化に関連する遺伝子発現が増加し、精巣上脂肪組織において熱産生に関わるUCP1の発現が顕著に増加した。すなわち、脂肪組織における脂質利用亢進と熱産生亢進が示唆され、結果的に、インスリン感受性が増加すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた動物実験を中心に、予定した研究を遂行中である。短期のLC/HP食負荷で誘導される比較的短期間での膵α細胞量増加が、神経ネットワーク(交感神経系)を介する、特に膵管周囲のα細胞の分化新生と増殖亢進によって制御される現象である可能性を明らかにし、さらにエネルギー代謝の中枢臓器である脂肪組織の質的変化を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
LC/HP食負荷の急性効果として認められた膵α細胞分化新生と増殖亢進に関しては、肝臓-視床下部-膵島間での臓器連関を想定し、肝臓→視床下部→膵臓、あるいは視床下部→膵臓経路に関わる迷走神経肝臓枝・膵臓枝離断マウスを用いての実験を現在解析中で、今後も検証を重ねていく予定である。さらに、肝グリコーゲン低下が起点となった代謝変化に関しても、今後解析予定である。LC/HP食に関連する白色脂肪細胞褐色化については、培養3T3-L1脂肪細胞の実験条件を修正して、グルカゴンの直接効果、さらにノルアドレナリンとの相互作用による脂肪細胞UCP1や褐色化関連(C/ebpβ, Pgc-1α細胞等)・代謝機能制御関連遺伝子発現の検討を行う予定である。実験に必要な機器および試薬は準備されており、今後研究はさらに進展していくことが推測される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者と実験内容・条件を適宜見直しながら、効率よく時実験を実施することができ、物品・試薬購入費が当初予定より少額となった。翌年度請求額と合わせて、分子生物学的解析料としてさらに効率よく使用する予定である。
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