研究課題
2型糖尿病のみを対象にしたコホートとしては、世界最大規模の研究の1つである「2型糖尿病患者におけるアスピリンの動脈硬化性疾患一次予防効果に関する研究(Japanese primary Prevention of atherosclerosis with Aspirin for Diabetes :JPAD)」を継続してきた。慢性腎不全から維持透析に至る患者は増加の一途をたどっている。そのうち糖尿性腎症が原因であるものが40%以上となっている現在において、糖尿病からの腎不全の発症、維持透析への移行を防止するのは喫緊の課題である。熊本大学を中心とした全国の対象施設の調査を熊本大学チームが行ってきており、奈良県立医科大学を中心とした関連施設の調査を奈良医科大学チームが行ってきている。JPADの統計解析は兵庫医科大学の解析チームがずっと行ってきている。血圧は患者登録時点から経時的に調査し、これまでの各対象患者の血圧の推移は判明している。HbA1cやクレアチニン値の調査も継続的行われている。全国の開業医の先生からデータ収集を行うことを考慮し、蛋白尿の定性試験結果を調査対象とすることで大部分の症例のデータを確保できている。登録時、蛋白尿陰性の患者2494人について、その後蛋白尿陽性になった患者446人と、陰性のままの患者2048人に分けて検討した結果、蛋白尿陰性のままの患者に比べて陽性になった患者では心血管イベントは1.71倍多くなることがわかった。血清クレアチニン値から推算糸球体濾過率(estimated glomerular filtration rate(eGFR))を算出し、2502人を対象とした解析を行った。その結果、観察期間11.2年の経過で糖尿病患者の血圧はわずかながら低下し、eGFRは有意に低下していた。このeGFRの低下は血圧が高い集団ほど大きかった。
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Journal of Cardiology
巻: 75 ページ: 387~393
10.1016/j.jjcc.2019.08.021