研究課題/領域番号 |
18K08523
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
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研究分担者 |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40275540)
長谷川 豊 岩手医科大学, 医学部, 特任講師 (90451559)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肥満 / 小胞体ストレス / 褐色細胞 / 2型糖尿病 / 糖尿病合併症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、高度肥満者の内臓脂肪で起きている代謝ネットワークの乱れの原因を分子レベルで解析することである。 ヒト内臓脂肪組織にベージュ細胞が存在するかの確認は、遺伝子発現解析や免疫染色の条件を検討したが良好な組織標本が少なく、遺伝子解析・組織解析ともはっきりした結果は得られていない。培養細胞・UCP1-Luciferase Inguinal preadipocyteを用いて脂肪細胞をベージュ化する因子に関しては、化合物のスクリーニングを開始したところである。ルシフェラーゼアッセイについては確実性をもって実施が可能になった。またこの細胞でミトコンドリア機能の変化を定量的に解析すべくアッセイ方法を確立した。また化合物投与後の遺伝子発現の変化と並んで、cAMPの活性化からPKAの経路を定量評価する手法やグルコース取り込み定量法を会得し逐次検討している。肥満に関する何らかの因子が白色脂肪細胞のベージュ化を阻害しているという仮説のもと研究を継続している。 今回のテーマをヒトの高度肥満者の病態の面からも解析すべく、糖尿病患者を中心にしたデータベースを作成している。全国的な糖尿病患者登録システムからBMI35以上の高度肥満者約1000名を抽出し、標準体重の糖尿病患者とプロペンシティスコアマッチを行い、糖尿病合併症の出現頻度や血糖コントロール、治療内容などを比較している。さらにBMI40以上の超高度肥満者280名に対して、生活習慣や社会背景などについてのアンケート調査を依頼しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト内臓脂肪組織を用いた検討は進捗が遅れている。肥満手術の際に得られた検体は徐々に増えてはいるものの、数量がまとまった後に遺伝子解析を計画しているため進捗に乏しい。また組織を用いた解析では、標本の保存状態に応じて免疫染色の精度が大きく異なるため評価に耐えうるレベルのデータが収集できていない。 培養細胞を用いた、白色脂肪細胞を褐色化する因子については一定の進捗が得られた。褐色化の評価に必要ないくつかのアッセイ系を確立し、化合物添加の前後での評価が進んでいる。 全国規模なデータベースを利用して高度肥満者の情報を入手できたことは大きな進展である。倫理委員会の承認を受け、高度肥満の少ない日本人における高度肥満糖尿病の特徴を解析している。またBMI40以上の割合は日本のデータはないが非常に少数であると予測される。こうした希少例も含めて実臨床につながる解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト内臓脂肪組織を用いた検討については、肥満手術の検体を着実に増やしていく。近日中に、検体数が不十分であっても遺伝子解析を実施する予定である。また組織解析については切片数を増やして条件検討を行い、一定の結果を得たいと考えている。 白色脂肪細胞を褐色化する因子についてのin vitroの研究は一定の進捗が得られているため、複数のアッセイ系を用いて化合物添加の前後での評価を進めていきたい。 全国規模なデータベースを利用した高度肥満糖尿病の検討は、標準体重の糖尿病患者とプロペンシティスコアマッチを行い、糖尿病合併症の出現頻度や血糖コントロール、治療内容などを比較している途中である。さらにBMI40以上の超高度肥満者280名に対してのアンケート調査は送付段階にある。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト検体を用いた遺伝子解析をはじめとする解析に関して、十分な症例数が確保できなかったことから実験数が予定より少なかったため予算執行が予定を下回った。2020年度はヒト組織遺伝子解析などを実施することで予算を執行する。
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