研究課題/領域番号 |
18K08524
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
出崎 克也 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90337329)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オキシトシン / 糖代謝 / インスリン / グルカゴン / カチオンチャネル |
研究実績の概要 |
オキシトシンは下垂体後葉ホルモンであり、その末梢投与は摂食抑制作用や抗肥満作用に加えて、膵島インスリン分泌を促進することが報告されている。しかし、オキシトシンの膵β細胞直接作用については不明な点が多い。そこで本研究では、オキシトシンの生理的インスリン分泌調節作用を明らかにすることを目的とし、オキシトシンの膵β細胞直接作用およびシグナル伝達を検討した。 雄性C57BL/6Jマウスからコラゲナーゼ法により膵島を分離し、ELISA法にて膵島インスリン分泌を測定した。単離β細胞の細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)をfura-2蛍光法により測定し、β細胞イオンチャネル電流および膜電位をパッチクランプ法により測定した。 ・オキシトシンは、刺激濃度グルコース(8.3mM)存在下でβ細胞[Ca2+]iを濃度依存的に増大させ、膵島インスリン分泌を促進した。非刺激濃度(2.8mM)グルコース下では、オキシトシンはβ細胞[Ca2+]iやインスリン分泌に影響しなかった。オキシトシンによるβ細胞[Ca2+]i上昇と膵島インスリン分泌促進作用は、オキシトシン受容体拮抗薬やGqタンパク質阻害薬、非選択的カチオンチャネル阻害薬によって抑制された。 ・オキシトシンは、β細胞の非選択的カチオンチャネル電流を増強し、膜電位を脱分極させた。これらオキシトシンによるチャネル電流の増強と脱分極作用は、非選択的カチオンチャネル阻害薬によって抑制された。 以上より、オキシトシンはβ細胞に直接作用し、Gqタンパクを介した非選択的カチオンチャネルの活性化により細胞膜の脱分極を促し、グルコース誘発インスリン分泌を増強すると考えられる。カチオンチャネル活性化を介したβ細胞オキシトシン受容体シグナルは、新たなインスリン分泌促進薬の開発基盤となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究施設の改修で実験が遅れたことと、参加予定の学会や研究打ち合わせ等が中止になったため。
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今後の研究の推進方策 |
オキシトシンのインスリン分泌促進シグナルとして新たにカチオンチャネル電流の増大を見出した。今後はこのカチオンチャンルの分子実体に電気生理学的および分子生物学的にアプローチする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究施設の改修で実験が遅れたことと、参加予定の学会や研究打ち合わせ等が中止になったため。
今年度は、機器移設等で追加経費が必要で使用予定である。
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