研究課題/領域番号 |
18K08525
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
吉田 昌史 自治医科大学, 医学部, 講師 (50528411)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / 糖尿病 / インクレチン / GLP-1 / 膵β細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膵β細胞KATP非依存性インスリン分泌機構を解明し、2型糖尿病発症初期段階でのインスリン分泌低下機序を示し、その防止法を確立する事で2型糖尿病の発症自体を抑制する事である。我々はtransient receptor potentialチャネル(Trp)を介する新規インスリン分泌経路を発見し、報告してきた(Diabetes.2014)。本研究では、糖尿病モデル動物を用い、糖尿病発症前後でのTrp経路の反応の違いの有無を明らかにすることで、糖尿病発症にTrp経路が影響しているかどうかを検討する。令和元年度は、糖尿病モデル動物において、血糖コントロール悪化前後での経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)・インスリン分泌測定・cAMP測定・電気生理学的検討を実施した。OGTTにて、ブドウ糖負荷前値と負荷後の血漿インスリンの差(Δins)を負荷後15分で比較した結果、Δins15分は、DM発症前においてDM発症後と比較して有意に保たれていた。この結果より、DM発症前では人間同様インスリン第1相分泌は保たれ、発症後では消失している事が確認された。インスリン分泌測定、cAMP測定を実施した。16.6 mMG10分の刺激では野生型、DM発症前において有意にインスリン分泌の増加を見たが、DM発症後では消失していた。cAMPに関しては16.6mM G刺激にて、DM発症前と野生型では有意な増加を確認したが、DM発症後ではみられなかった。Trpm2電流測定を行った。16.6mMG刺激にて、野生型・DM発症前では有意にTrpm2電流が増加したが、DM発症後では消失していた。100pMのExendin-4刺激にて野生型、DM発症前ではTrpm2電流が有意に増加した。DM発症後においても、電流密度の低下はあるものの、Trpm2電流の増加は有意に保持されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度、2型糖尿病モデル動物において、耐糖能悪化前後でインスリン分泌の第1相が低下し、その原因はTrpm2チャネルに起因することが明らかとなった。 当初の研究計画では、グルコレセプター刺激によるTrpm2経路への影響の検討も実施予定であったが、糖尿病モデル動物においてもグルコレセプター刺激によるcAMP増加反応は保たれていることが判明し、2型糖尿病発症の機序としてはグルコレセプターの関与は低い事が示唆された。そのため、当初予定していたグルコレセプター刺激経路のシグナル解析は次年度に持ち越し、2型糖尿病発症機序の解明をまず実施することとした。当初実施予定であった研究計画を次年度に持ち越しとしたため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在糖尿病モデル動物を用いた検討を優先させているが、その他の研究についても今後当初の計画通りに実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大予防の一環として、学内にて研究活動の自粛が行われたため、その間に予定していた動物の購入などを次年度に持ち越した。繰り越した 予算と当該年度必要分として請求した助成金を合わせ、糖尿病モデル動物の購入、シグナル解明に必要な試薬の購入、備品の修繕費用に使用する。
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