研究課題/領域番号 |
18K08531
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小山 英則 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80301852)
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研究分担者 |
楠 宜樹 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00792194)
庄司 拓仁 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (40624044)
小西 康輔 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90532367)
角谷 学 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90755109)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳内ストレス / 睡眠・リズム障害 / 認知機能 / 自律神経機能 / 糖尿病 / 炎症 |
研究実績の概要 |
引き続き代謝異常と認知機能障害の関連を、研究計画に基づいて基礎的・臨床的両面から検討を進めている。 臨床研究:HDHCCコホート研究: 2020年1月末時点で、登録者数364名(兵庫医大241名、関連病院123名)、MRI VSRSD評価151名、脳血流シンチ実施65名、アミロイドPET実施42名、腸内細菌叢解析用採便71名と着実に登録は進捗している。阪神医療圏の血糖変動に関する管理状況 (J Diabetes Invest, in revision)、1型糖尿病患者の血管内皮機能と血糖変動の関連を明らかにした(Acta Diabetol 57: 31-39, 2020)。また、「外来高齢糖尿病患者の認知機能の実態」、「認知機能関連頭部画像所見の実態」「糖尿病患者の睡眠効率と海馬傍回の脳萎縮の関連」を、2020年度糖尿病学会(大津)で現状を報告予定である。 HSCAAコホート研究:自律神経機能と心左室拡張機能との関連(Metabolism Open 5: 100025, 2020)、睡眠の質とインスリン分泌能の関連(Metabolism Open 2020 in press)、を明らかにした。 基礎研究:睡眠及びそのリズム障害、慢性潜在性炎症に関するマウスモデルがそれぞれ確立され、空間認知など認知機能障害に対する影響が確認された。睡眠リズム障害モデルでは、海馬傍回領域の神経活動が明らかに低下していること、アミロイドβ沈着を伴うアルツハイマーモデルマウスにおいても認知機能悪化を惹起することを示した。慢性潜在炎症による認知機能低下は炎症の基盤因子であるreceptor for AGEs (RAGE)欠損マウスでは認められず、潜在炎症による認知機能障害のメカニズムの解析も開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDHCCコホート研究は概ね順調に登録患者を増やしているが、2020年以降明らかにCOVID-19の影響による新規患者と追跡検査に支障が出てきている。このような状況ながら、断面解析をスタートし、複数の成果も得られてきている(Acta Diabetol 57: 31-39, 2020; J Diabetes Invest, in revision)。 HSCAAコホート研究:国際的学術誌に2報採択され(Metabolism Open 5: 100025, 2020; Metabolism Open 2020 in press)、計画は順調に推移している。 基礎研究:睡眠及びそのリズム障害、慢性潜在性炎症など、脳内ストレスを明らかにするためのマウス動物モデルは確立され、その認知機能への影響に関する知見が得られてきている。睡眠・リズム障害モデルについては、電気生理的な解析も実施し、海馬傍回領域の神経活動電位が明らかに低下し、認知機能低下と関連することを見出している。慢性潜在炎症モデルにおいては、RAGEの関与を見出している。
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今後の研究の推進方策 |
HDHCC研究:COVID-19の影響で現、現在新規登録は完全に中断している。感染状況の改善を前提に、2020年度中に500名、そのうち睡眠の評価実施患者300名を見込んでいる。MRI VSRSDは200名、脳血流シンチは100名、アミロイドPETは80名の総登録数に達することを見込んでいる。2020年度中に一定登録数で解析可能な、血糖変動、睡眠障害、睡眠・覚醒リズム、認知機能の実態に関する断面解析を実施する予定である。 HSCAA研究:睡眠の意義に関して、2020年度は腎機能障害進展、左室拡張機能障害の進展、に関する追跡研究の解析と成果公表を予定している。 基礎研究:睡眠リズム破綻モデルにおける、海馬傍回の神経活動電位低下、認知機能障害のメカニズムの解析を進める。具体的には、パッチクランプ法を用いた神経生理学的手法を用いて、関与するニューロンとその制御因子を検討する。本手法は本学生理学の古江秀昌教授の協力を得て実施する。さらに、マウスの脳波解析、Per2, Dbp, Nr1d1, Clock, Npas2などの時計遺伝子調節を検討する。慢性潜在炎症もでるについては、ミクログリア活性化、脳血流関門機能をRAGE遺伝子改変マウスを用いてRAGEの関連から検討する。
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