GLP-1受容体作動薬は、血管保護作用のエビデンスを有することで注目されている糖尿病治療薬である。我々は、GLP-1受容体作動薬の癌抑制作用の検証を行ってきた。GLP-1受容体がヒト前立腺癌に発現しており、GLP-1受容体作動薬Exendin-4がERK-MAPKを抑制することで前立腺癌の増大を抑制することを見出し報告した。さらに、GLP-1受容体作動薬とメトホルミンを併用することで、相乗効果で前立腺癌を抑制することや、レンチウイルスでGLP-1受容体を過剰発現することでも前立腺癌抑制作用を再現できることも見出し報告した。我々の基礎研究の後、大規模臨床試験のLEADER試験においてGLP-1受容体作動薬リラグルチドが有意に前立腺癌を抑制したことが報告された。さらに、GLP-1受容体作動薬が乳癌の増大を抑制し、前立腺癌同様メトホルミンとの併用で相乗効果が得られることも見出した。メトホルミンはAMPKを活性化してアポトーシスを誘導し、GLP-1はNF-kBを抑制して細胞増殖を抑制した。2つの糖尿病治療薬が、それぞれ個別のパスウェイを介して共に乳癌を抑制しているところが非常に興味深い。今わが国で最も使用されている糖尿病治療薬であるインクレチン関連薬と癌の研究がさらに進展することが期待される。
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