研究課題/領域番号 |
18K08535
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
齋藤 武 千葉県がんセンター(研究所), がん治療開発グループ がん遺伝創薬研究室, 主任医長 (20406044)
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研究分担者 |
幡野 雅彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20208523)
吉田 英生 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60210712) [辞退]
坂本 明美 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 准教授 (90359597)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オートファジー / 制御性T細胞 / 細胞性免疫 / ウェスタンブロティング / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
2021年度は引き続き、末血T細胞におけるautophagic vacuolesの特徴につき、胆道閉鎖症(Biliary Atresia: BA)と疾患対照群で電子顕微鏡下で観察した。 Autophagosome とautolysosome の両者をカウントし、autophagic vacuolesとして算出した。末血T細胞50個当たりのvacuoles数は対照群 8.5±3.6, BA 17.3± 7.5でありBAで有意に多かった。3個以上のautophagic componentsを有するT細胞数は、対照群0.5±0.7, BA 3.3±2.5であり、BA T細胞のautophagy機能が亢進していた。1%FBS培養にて飢餓状態を作り出し活性の変化をみると、対照群では3.0±2.1, BAでは12.1±4.5と、BAでは活性が著増した。末血T細胞各分画のautophagy活性を調べると、CD8とTreg(CD4+CD25+CD127-)で顕著であった。末血T細胞のLC3-II発現を検索すると、BAは対照群より高発現する傾向がみられ、T細胞subsetではBAの CD4/CD8 memory細胞はnaive細胞より4倍ほど高発現していた。さらに、この傾向はTreg(CD4+CD25+CD127-)でより顕著であった。 肝組織の免疫組織染色では、BAでp62が肝内微小胆管で有意に高発現し、それは胆管上皮細胞核内に認められた。p62とLC3-Ⅱは胆管上皮細胞で共発現していたが、後者は細胞質内で蓄積しており、BAではとくにautophagosomeと autophagolysosomeの形成過程の異常が示唆された。2022年度は、定常状態とストレス下におけるT細胞分画のautophagy活性につき、BAと対照群で比べる所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により実験環境が不安定となっており、適応に時間と手間を要し研究進捗が遅れている。すでにPBMCsより各T細胞分画を分離抽出する過程は確立した。2021年度は、平時(spontaneous)においてはBA Treg分画(CD4+CD25+CD127-)のLC3-IIとp62のタンパク発現レベルは対照群と有意差を認めず、anti-CD3-CD28刺激下では有意に上昇することを示した。今年度はT細胞CD4/CD8のナイーブ細胞(CD45RA+CD62L+)、central memory subset(CD45RA-CD62L+)、effector memory subset(CD45RA+CD62L-/CD45RACD62L-)で検討しているが、手技と結果が安定していない。 肝胆道組織を用いた実験では、BA肝内胆管上皮細胞におけるautophagy機能の亢進は明らかである。しかしp62とLC3-Ⅱの細胞内の発現増強箇所には相違があり、後者は細胞質内に、前者は核内近傍に局在している。さらに両者の局在はBAの手術日齢に依存し、早期手術例ではp62の発現が、晩期手術例ではLC3-Ⅱのそれが顕著であった。 high-mobility group box-1 (HMGB1)はdamage-associated molecular pattern molecules (DAMPs)であり、免疫系を賦活化しauthophagyを誘導する。BA TregにおけるHGMB1の発現をmRNA/タンパクレベルで調べると、BAは対照群に比し3-4倍ほど高発現していた。本結果は、DAMPsがBA Treg細胞のautophagy機能を活性化していることを示唆する。今後、HGMB1のmRNA/タンパク発現をT細胞の他分画においても確認してゆく。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、BAの肝内胆管上皮細胞と末血Tregにおけるautophagy機能の亢進が示唆される。とりわけ平時よりもストレス環境下で顕著である。Tregのみでなく、CD4/CD8 memory細胞はnaive細胞に比し、よりLC3-IIとp62の発現が増強し、電子顕微鏡下でautophagic componentsを有するものが著増していた。 一般に、high-mobility group box-1 (HMGB1)はdamage-associated molecular pattern molecules (DAMPs)であり、免疫系を賦活化しauthophagyを誘導する。現在、BAにおけるautophagyの機能亢進にHMGB1分子が関与しているか、検索している。 標的細胞のLC3-IIが高発現する機序として、上流のautophaosome形成が促進される場合と、下流のautophagosomelysosome fusionが阻害される場合がある。両者を見極める目的でE64dとpepstatin A存在下で同様の実験を施行中である。E64dとpepstatin Aは、LC3-II/autophagosome分解を阻害するため LC3-II高発現の機序が理解され、ひいてはBAで見られるautophagy活性が解釈できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ感染の猛威により、研究 実施場所が一時期閉鎖され、所属施設の研究活動が一時一律に停止した。研究分担者は前年度に購入した試薬や物品類の残りを使用しながら、実験を継続していた。 2022年度はこれまでの実験結果の再現性を確認するとともに、BAのT細胞subset分画におけるautophagy機能を探索する必要があり、相応の支出が見込まれる。 また本研究課題の最終年度にあたり、関連学会や研究会への参加と発表、英文・和文論文の執筆などに研究費を使用する。
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