研究課題/領域番号 |
18K08538
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
趙 向東 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定助教 (00444464)
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研究分担者 |
祝迫 惠子 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (70625300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肝移植 / マウス / 免疫抑制 |
研究実績の概要 |
肝移植は、末期の肝硬変、肝不全の患者を救う唯一の根本的な治療法であり、術後 20 年以上長期生存する症例も増加してきた。現行のカルシニューリン阻害剤を中心とした免疫抑制療法は、急性拒絶を劇的に減少させ、移植成績を改善した。しかし、長期的にみるとカルシニューリン阻害剤による腎機能障害は大きな問題であり、腎関連死が経過とともに増加する。腎毒性の低い免疫抑制剤でも、悪性腫瘍や感染症など、広範に免疫能を抑制することが原因と考えられる合併症が起こりうる。本研究では、新たな免疫抑制療法を検証する動物モデルとして、門脈だけでなく動脈も再建するマウスの肝移植モデルを確立した。MHC 完全不適合間の同種異系肝移植で長期(100日以上)観察を可能とし、このモデルを用いて、急性期および慢性期の移植免疫反応を観察し、解析した。さらに、新たな免疫抑制療法の検証を行い、その効果について、末梢血の解析と病理組織学的検証を行った。MHC 完全不適合間のマウス肝移植では、免疫抑制剤を投与しなくても生存が可能であるが、急性期の拒絶反応が術後約4週間持続し、その後徐々に落ち着くものの、術後16週後であっても正常肝とは異なる病理組織像を示し、完全な免疫寛容が成立している状態ではないことが分かった。急性期の拒絶反応を抑制することによって、慢性期の状態をさらに改善する治療介入を進めている。治療法として、臨床で用いられている免疫抑制剤をコントロールとして、新たに新規薬剤、免疫抑制機能を持つ細胞の移入を試みる準備を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、マウス肝移植モデルの作成と実施を行い、年度の後半は、解析を行ったっため、新型コロナ感染所拡大に伴う自粛の影響をほとんど受けることなく、研究を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
免疫寛容が成立した臨床検体のプロファイルとマウス肝移植モデルの解析データとの比較検討を行い、免疫寛容の成立のメカニズムを探るとともに新しい治療法の確立を目指す。マウス肝移植モデルのデータから、これまでに分かっていなかった経時的な拒絶反応の経過を解析する。
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