研究課題
臓器移植後の理想的な免疫抑制療法は、移植臓器に対する免疫反応のみを抑制する方法であるが、現在、そのような免疫抑制療法は確立されていない。一方、肝移植などで免疫抑制剤の服用が不要となる症例が報告されており、臓器移植において、免疫寛容は成立しうると考えられている。ただし、免疫寛容のメカニズムについてはほとんど解明されておらず、臨床的にも免疫抑制剤の減量・離脱についてのエビデンスはない。本研究は、マウスを用いて臓器移植における拒絶反応の詳細な解析を行い、さらに免疫寛容を成立させてそのメカニズムを明らかにし、新たな免疫抑制療法の確立を目的として本研究は行われた。各種の臓器移植がすでにヒトに実施されているにもかかわらず、マウスの臓器移植モデルを用いるのは、免疫学的に詳細な解析を行い、新しい治療法についての科学的なエビデンスを構築するためであり、これまでの臓器移植に関する動物実験が、短期の生存率のみを比較しているという弱点を克服するため、マウスの肝動脈吻合を行う同所性同種異系マウスの肝移植法を確立し長期観察を可能にした。移植後16週までの経時的な肝組織の解析を行い、マウスの同種異系肝移植では、部分的寛容が誘導されうることを見出した。本研究において確立したマウス肝移植の手法を寛容誘導法開発のプロジェクトに融合させることによって活用し、今後もさらに発展継続させていく予定である。寛容誘導の方法として、免疫抑制系の細胞療法の検討を行っている。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell Mol Gastroenterol Hepatol.
巻: 21 ページ: S2352-345X
10.1016/j.jcmgh.2021.01.001.