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2019 年度 実施状況報告書

除鉄による幹細胞性喪失のメカニズムの解明と癌幹細胞治療への新展開

研究課題

研究課題/領域番号 18K08539
研究機関岡山大学

研究代表者

大原 利章  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40623533)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードがん幹細胞 / 鉄
研究実績の概要

1)幹細胞性維持に関わる未知の鉄代謝経路の解明
幹細胞性マーカー(Nanog等)を発現している食道癌細胞株TE-8を用いて、鉄キレート剤(DFX, DFO, SP-10)を投与すると、これまで確認したHSC-2細胞、OE33細胞と同様に幹細胞マーカーの発現が抑制される事を確認した。次に食道癌の既存の標準治療薬であるCDDPを対照薬としてマイクロアレイを行い、鉄キレート剤と幹細胞性に関係するシグナルについて検討を行った。その結果、IL-6の発現がCDDPと鉄キレート剤で大きく誘導性が異なる事を見い出し、PCRおよびELISAで、CDDPは食道癌細胞株(TE-8、OE33)に対してDFXと比較してTE8は100倍、OE33は20倍以上誘導する事が判明した。しかし、IL-6の自己分泌のみによる幹細胞性の保持は確認できず、IL-6は癌微小環境維持の主なサイトカインのひとつであるため、癌微小環境を介した幹細胞性維持機構を低下させている可能性が示唆された。

2)新しい着想に基づく癌幹細胞治療法の新機軸への挑戦
幹細胞マーカーNanogが本当に臨床手的に予後不良因子であるか明らかにするために食道癌の134例の切除検体を用いてNanogの免疫染色を行い、予後との相関について検討を行った。既報に習いスコアリングを行うと、Nanogの高発現群は98例、低発現群は36例であった。全生存期間、無病生存期間共にNanog高発現は有意に悪く、予後不良因子である事が明らかになった。鉄キレート剤はNanogの発現を強く抑制できるため、食道癌の予後を改善できる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

鉄キレート剤による幹細胞性の喪失は癌種に関わらず、幹細胞マーカーを発現していれば普遍的に認められる現象である事が確認できた。マクロアレイの結果から、鉄キレート剤は癌細胞の増殖を抑制するだけでなく、既存の治療薬(CDDP)と比較してIL-6の誘導効果が認められず、幹細胞性制御と合わせて治療薬として効果的と考えられた。臨床検体の検証では本邦の食道癌としては大規模な症例数(n=134)での検討ができ、癌幹細胞治療法開発の基礎データとして有意義な検討が可能にると考えられる。

今後の研究の推進方策

得られた臨床症例での幹細胞性と予後の検討データと鉄キレート剤の持つ有用性についての知見を統合し、さらに既報にある他の癌幹細胞治療薬とも比較しながら、癌幹細胞治療法の新機軸への挑戦を行っていきたい。

次年度使用額が生じた理由

主には免疫染色についての実験が想定より無駄なく進んだため、費用が想定よりも少なく済ませる事ができた。しかし、鉄キレート剤の幹細胞制御の現象解明はまだ不十分なため、次年度にさらに詳細に検討を行い、解明につなげたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] A Promising New Anti-Cancer Strategy: Iron Chelators Targeting CSCs.2020

    • 著者名/発表者名
      Yuehua Chen, Toshiaki Ohara, Boyi Xing, Jiping Qi, Kazuhiro Noma, Akihiro Matsukawa
    • 雑誌名

      Acta Medica Okayama

      巻: 74 ページ: 1-6

    • DOI

      10.18926/AMO/57946

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 鉄キレート剤による幹細胞性制御による新規食道癌治療法2019

    • 著者名/発表者名
      大原 利章、桂 佑貴 、野間 和広、西脇 紀之、河本 慧、田澤 大、香川 俊輔、藤原 俊義
    • 学会等名
      第78回日本癌学会総会
  • [学会発表] Stemness control by iron chelator is a novel therapeutic strategy for esophageal cancer2019

    • 著者名/発表者名
      Toru Narusaka, Toshiaki Ohara, Kazuhiro Noma, Yuki Katsura, Noriyuki Nishiwaki, Motoyasu Tabuchi, Takuro Fushimi, Toshihiro Ogawa, Sho Takeda, Satoshi Komoto, Hiroaki Sato, Takuya Kato, Satoru Kikuchi, Yasuko Tomono, Hiroshi Tazawa, Shunsuke Kagawa, Yasuhiro Shirakawa, Toshiyoshi Fujiwara.
    • 学会等名
      110th Annual Meeting American Association for Cancer Research
    • 国際学会
  • [学会発表] 除鉄による幹細胞性制御による新規食道癌治療法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      鳴坂徹 、木村 文昭 、大原 利章
    • 学会等名
      第43回日本鉄バイオサイエンス学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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